「新規就農と施設園芸」 ①課題 後継ぎ不足や農業離れ
豊かな大地で営まれる農業は、石巻地方を支える大きな産業。比較的温暖な気象条件と豊富なかんがい用水で、県内でも有数の農業地帯であり、稲作を始め、生産される作物は多種多様。地域の食卓を支えているが、高齢化による跡継ぎ不足や農業離れなどで、その数は年々減り続けている。
県の調べでは、管内の総農家数を平成22年と同29年で比較すると約3割減。これは23年の東日本大震災による農地の津波被害で離農が加速したことなどが要因だが、震災後は10ヘクタール以上を扱う農家数が増加し、農地集積などが進む。主力のコメは価格の下落で大規模化しないと収益が出ず、機械化などの資金投資も必要とあり、新規就農する際の大きな壁にもなっている。
農業者の高齢化と若者の他産業への流出の問題も大きく、引退した農家は、他の農家に土地を預けて管理してもらうケースが増加している。
問題の解決に石巻市では、若者らの就農につなげる「農業担い手育成事業」を行っている。業務は一般社団法人イシノマキ・ファームが委託を受け、農業を学ぶ講座や、お試し移住で農家体験を行っている。
30年に開所した「石巻市農業担い手センター」はシェアハウスなどの拠点を整備し、農業に興味のある若い世代を呼び込んで地元農家との交流や実習を行ってもらおうというもの。その一つの「就農コンシェルジュ」は興味のある人それぞれに合った計画を示し、本格的な就農につなげる支援プログラム。全国から多くの人を呼び込んでおり、新規就農者も増え始めている。
震災後に加速した現役世代の離農だが、一方で気候に左右されない安定的な生産を目指す「施設園芸」も注目されている。ネットワーク技術(IOT)を活用し、環境を制御することで高品質な農産物を生産する「スマート農業化」も進んでおり、これまでの経験と勘を活用する農業と違い、情報によって最適な環境を導き出し管理する。
デジタルに強い若者世代にも魅力的な仕事だが、これも土地や設備にかかるコストが大きく、手軽に異業種から転職というわけにもいかないのが現状だ。
最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。皆様から頂くサポートは、さらなる有益なコンテンツの作成に役立たせていきます。引き続き、石巻日日新聞社のコンテンツをお楽しみください。