アルモンデごはん 利己的につくる利他的なごはん
自分の幸せのために人を幸せにする。中学生の頃、大好きだったミュージシャンCHARAさんのインタビュー記事で出会った言葉。当時の私にとっては、すごく斬新だったはずなのに、ストンと腑に落ちて染み込んでしまった言葉。今でもずっと私の真ん中にあります。
そして気づけば、自分を喜ばせるために自分が幸せであるために、目の前の人にごはんを作る。そんな日々を過ごしています。利己的な利他とでもいうのかな。目の前の人は時に目の前の食材にもなります。野菜たちが活きる一皿をつくることで、私が幸せになっている。循環する想いを食べて生きているみたいです。
<8月5日>
さっぱりとお魚が食べたくて、半額になっていたカラスカレイを購入。茹でながら、さて何を添えようかなぁと考えていました。冷蔵庫に焼きパプリカの酢漬けがあったっけ。細切りにした酢漬けパプリカに、少し醤油を混ぜてたっぷりカレイに添えたら、紅白でなんだか縁起の良い一皿になりました。
茹で魚をするようになってから、我が家のお魚率は飛躍的に高くなりました。茹で魚と野菜をたっぷり食べるソースの組み合わせを考えるのが楽しい。今回使った酢漬けのパプリカは、パプリカが安売りされていた時、数個買って作っておいたもの。焼いて皮を剥いたパプリカを米酢に浸しておいただけの簡単保存食です。色も味もカラフルなパプリカは、食べると元気になるんですよね。野菜の色にはちゃんと意味があるなぁ。
<8月6日>
昨日からハーブ塩に漬け込んで、楽しみにしていたラムの骨つきリブ。焼いたらお肉がカッチカチで、脂身も多くて、ちょっとがっかりでした。でもそのリブから出た油で炒めたレタスが、まぁ美味しくて!結果的にプラマイゼロ。お肉選びは得意じゃなくて、失敗することも多いんです。みんなはどうやって選び抜いているんだろう。
畜産や精肉業界のことばかりに興味を持ちすぎて、実際選んで作って食べることは、疎かになっていたみたい。お肉のことも少しずつ学んでいくぞ。
<8月7日>
材料全てを和えただけ。大ぶりにカットしたきゅうりと砕いたフェタチーズを和えておいて、きゅうりがしんなりたら、ルバーブジャムも加えて出来上がり。そんなシンプルな一皿ですが、これが本当に美味しいんです。フェタチーズの美味しい塩味をたっぷり吸ったきゅうりも、きゅうりの水分でまろやかになったフェタチーズの塩味も最高。ルバーブジャムは我が家に欠かせない調味料です。ベリー系でも柑橘系でもない、クセのない酸味を持つルバーブジャムは、どんな料理にも合わせやすい。チーズとの相性も良し、発酵調味料(醤油や味噌)との相性も良し、ドレッシングやソースの酸味や甘味として使うのも良し、と本当に万能なのです。でもあまり気軽に手に入らないから、毎年自分で仕込むようになりました。今年は量を仕込めなかったから、もう残り1瓶。どうしよう。
<8月8日>
小学生の頃、我が家は友人たちの溜まり場でした。母が専業主婦だったこと、私が一人っ子で自分の部屋を持っていたことが大きな理由だったと思います。でもそれ以上に、母の手作りおやつや軽い夕飯を、みんな楽しみにしていたのだろうな。そんな思い出と共に、蘇るおやつの記憶。それは「茄子のレモン煮」です。茄子を砂糖とレモンで甘酸っぱく煮た母の定番料理ですが、友人たちは皆、甘い茄子!?とびっくりしていました。それでも子供なりに、出されたものは食べなくちゃと、恐る恐る口にした瞬間の美味しい!という表情。嬉しそうに笑う母の姿。自分の家のごはんが世の中の定番ではないこともある、と知った日だったのかもしれません。この日はレモンが切れていたので、プルーンと一緒に煮たけれど、これも美味しかった。同じ色のものは味の相性も良いという法則。
<8月9日>
一本だけ残ったなすと、頂いたおばけきゅうり(育ちすぎたきゅうり)、そしてこれさえあれば大満足の切干大根でつくるキムチ。和えるだけのなんちゃってキムチです。切干以外の野菜は毎回アルモンデ。適当ヤンニョムは、塩麹:甘酒:ナンプラー:韓国粗挽き唐辛子=1:1:1:2に、すりおろしたニンニクと生姜を気分で加えています。ヤンニョムの材料を全て混ぜた後、味を調整したら、塩揉みして水分を切った野菜と水で戻した切干大根を混ぜるだけ。和えてすぐも美味しいし、半日後、1日後の味の変化を楽しむのも幸せ。夏野菜をたっぷり食べることができます。
きゅうりやなすって、糠漬けも塩揉みも美味しい。漬物界のヒーローたちだ。
<8月10日>
この日は撮影アシスタントのお仕事でした。いつも楽しく学びの多い時間。十分すぎる待遇と環境なのに、この日はさらに旅のお土産までいただいてしまいました。大塚さんの料理に合うと思って。そんな嬉しい言葉と共に受け取ったのは、素敵な小鹿田焼の器です。じーん。旅先で私を思い出してくださったことも、私の料理に合うものをと選んでくださったことも、嬉しくて嬉しくて。ただのお土産でもただの器でもない。特別な一皿です。
帰宅後、さっそくアルモンデつくったのは、「がんもどきと万願寺とうがらしのさっと煮」。器を見た瞬間、冷蔵庫のがんもどきが頭に浮かんでしまったんです。どうかな、器に馴染んでいるかな。なんでもない日の思い出に残る贈り物。ありがとうございます。大切にします。
<8月11日>
先週長岡に行った際、長岡巾着茄子を初めて食べました。まるでトマトみたいなカタチをした、長くない丸い茄子。実がしっかりしているので、皮を剥いて蒸して生姜醤油で食べるのが定番なのだそう。ジューシーですごく美味しかった。
長岡巾着ではないけれど、しっかり食感の白なすがあったので、さっそく真似っこ。皮を剥いて蒸してみました。悪くないぞ。いいぞいいぞ。きれいな茄子の白さをそのまま食べたくて冷蔵庫を開けたら、半丁残った豆腐を発見。ペーストにして味噌を加えて、ソースにしました。柔らかジューシーな蒸しなすとホワホワな豆腐ソースの組み合わせ、大正解!ここでもまた、同じ色のものは味の相性も良いという法則です。なすが美味しくて、毎日なすばかり食べてしまいます。