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不登校の高校生の彼と「祖母」

「かわいそう」

意図的に伝えていなかった実家の母に不登校の彼の状況を話した第一声だ。
そう言うと思っていた。
だから伝えなかったのだ。

母はよく「かわいそう」と言う。
しかし、わたしは「かわいそう」という言葉が好きではない。
母に一度、
「よくかわいそうって言うけれど、かわいそうってどういうこと?」
「本人を目の前にしてあなたはかわいそうだと言える?」
と尋ねたことがある。
わたしが納得する答えはなかった。
反対にそんなことを言い、かわいそうと思わないわたしは優しくないと言われたと記憶する。

学校に通えていない彼を「かわいそう」と母は言う。
不登校の彼が色々と悩み、辛い時期を過しているのは確かだ。
だけど、そんな彼を「かわいそう」とはわたしは思わない。
彼が「かわいそう」と思われることは、彼の支えになるのだろうかと思う。

数日後、別用があり母に電話をした。
彼の話になると「色々考えて涙が出る」と涙声で伝えられた。

孫を思い、心配してくれていることは分かっている。
ただその心配と涙は今の彼の重荷になる。
今夏は、彼は一緒に帰省しないことにする。
そう説明し、「これはお互いのためだよ」と伝えると、渋々ながら納得してくれた。