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不登校の高校生の彼の「親それぞれの気持ち」

彼の不登校がはじまってから、彼の父親は大きく見守っていた。
「無理をしない」「無理はさせない」というのが不登校への対処方法。
それを理解しようとし、彼の「学校に行かない」気持ちを尊重していた。

当初は元気になることだけを願っていたが、
決断に迫られた時、
「時間はかかっても、いつか今の学校に再び登校する」に気持ちが傾く父親
「今の高校は辞めて、通信制高校に転校する」に気持ちが傾く母親
と意見のすれ違いが浮き彫りになった。

留年が決まり、
彼は、通信制高校へ行く気持ちを固めているけれど、
彼の父親は、留年してでも「今の高校」に行くことを希望していた。

「息子がこの経験を克服することが大きな自信となる」
「長い人生においてそれが息子のためになる」
というのが父親の考えだ。

彼が不登校になる前は父親寄りの考えであったので、理解はできる。
心身共に元気な時の彼にならば、頑張ることを強要していたかもしれないが、「今の高校」の環境は、彼に合っていないのは明らかだ。
留年している学生が一人もいない「今の高校」に再登校することが、彼にとって、とても酷であることも明らかだ。
その現実は彼の父親も分かってはいるけれど、心に何かひっかかることがあるらしい。

転校先の通信制高校への見学は親子3人で行った。
転校の話しをする度に、
「もっと慎重に考えないと」
と答える彼の父親にイライラしてきた。

「どうなったら、納得するの?」
「分からん」

そう、誰も答えなんて分からない。
何となくこっちの方がよさそうだと思う方向に進んでいるだけなのかもしれない。不登校の高校生の彼も、彼の父親も彼の母親もみんな不安なのだ。

進んだ方向が彼に合わなければ、また別の道を進んでいく。
そうして一歩一歩、進んでいこう、
と、それぞれが今は思っている。