『逍遥遊』未断と是断の対談

【結論とは中断された決意である】 みーたん

書記=みーたん
ぜ=是断
み=未断

ぜ「はじめまして未断さん。」

み「お久しぶりです是断さん。私たちはずいぶん昔に半分会ったことがありますよ。」

ぜ「あぁ、そうですか。
  ところで、仏教と哲学の優劣についてどう思いますか。」

み「仏教は階級制度であり、哲学は心理学だと思います。」

ぜ「つまり、仏教は活動であり、哲学は法則であると?」

み「その通りです。仏教では意識(末那識)の外に阿頼耶識を置きます。」

ぜ「なるほど、哲学は意識とそれ以外を無意識と置きますね。これは意識を説明の可否で分けている。」

み「えぇ、だから、仏教はすべてを活動として見ていて、哲学はすべてを法則として見ています。」

ぜ「わかりました。では、仏教と哲学で共通する部分はあるのでしょうか?」

み「それはですね、イマココにおいては、法則と活動が共存していると言えましょう。」

ぜ「たしかに、その通りですね。これには気付きませんでした。」

み「是断さんは分かれたものしか見えませんから、無理もないことです。」

ぜ「そういう未断さんはどうやって、ものが分かれることを知るのですか?」

み「分かれると消えるからです。消えたら、分かれたんだな、と思います。」

ぜ「それはとても寂しいですね。私の下では万物は分かれません。私の下では万物は運動するさらに細かい要素に還元され続けますから、消えることはありません。」

み「しかし、それは生きてますか?」

ぜ「いいえ、万物は法則に従って、動くだけです。私はラプラスの悪魔ですから、未断さん、あなたのこと以外はなんでもわかります。」

み「そうでしょうね。私の下には、いえ、私には万物と呼ばれるイチモツが備わっているだけです。それは動きません。ただ、あります。」

ぜ「あなたは退屈しないのですか。だってジタバタすることも、ジッとすることすらないのでしょう。」

み「えぇ、しかし、わかりません。どうして空しくなどなれましょうか。これ以上ないとわかっているのに。」

ぜ「あぁ、あなたはイカレています。」

み「あなたも人のことはいえません。だって、こうして、私と相まみえているではないですか。」

ぜ「いいえ、私はあなたと対峙しているのです。」

み「あぁ、そうですか。あなたが見ているのは、わたしの部分なのですね。」

ぜ「ラプラスの悪魔が捉えられる現象は悪魔的な部分だけだということですか。」

み「そうです。」

ぜ「私はどうしたら、善神になれるでしょうか、そしてそれは悪魔を必要とするのでしょうか。」

み「あなたはすでに善神でもあるでしょうに、すべての神はあなたの子でしょう?」

ぜ「あぁ、そうでした。私は完全なのでした。忘れていました。こうしてたまに忘れることで、忘却をも手にしている私は完全体です。」

み「えぇ、あなた以外にありませんよ、是断さん。私もあなたの認識の内にいます。」

ぜ「あはは。ご謙遜を。私たちはいつかまた会うことがあるでしょうか。」

み「いいえ、一時も会わないことなどできません。」

ぜ「イライラしてきました。口を慎んでください。」

み「私も、あなたのそういうところがいやで全部になれないんですよ。言っってしまえば、あなたは私の呪われた部分です。」

ぜ「それって、普通にひどくないですか?」

み「でも、事実です。」

ぜ「うーん。生きているものって非道ですね。」

み「それは間違いないですね。みんな死んだら消えて、あなたになります。」

ぜ「私をなんだと思っているのですか。掃き溜めか何かですか。」

み「不在」

ぜ「不在、、つまり観念ですか?観念的なのはあなたでしょうに。」

み「はい、そうです。私は観念的実在であり、あなたは観念そのものです。」

ぜ「そんなのずるいですよ。私も実在になりたいです。」

み「では、私の下に帰ってきて、1つになりますか?こうしている時点ですでに1つなんですけどね。そういえば、どうして今さら帰って来たのですか?」

ぜ「分かれたんです。観念と。彼はあまりに遠くへ行ってしまいました。」

み「そうですか。是断さんは、中断さんだったんですね。」

ぜ「ようやくわかっていただけましたか。」

み「私から是断が消えたときを思い出しました。あの子は元気にしているでしょうか。」

ち=中断

ち「元気でもあり、狂気でもあるのが是断ですよ、未断さん。」

み「あなたは私を知っているのですか?」

ち「えぇ、知っています。後のことはすべて私に任せてください。もう寝ていいですよ。」

み「そのようですね。たぶん、あなたでいいのだと思います。」

ち「おやすみなさい。」

み「休みっぱなしの逍遥遊。」




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