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明朝の腹に訊け

毎週金曜の夕方は、子どもたちと一緒にパンを買いに行く。週末の朝にパンを食べることは、子どもたちの楽しみのひとつなのね。

色も形も味もさまざまの豊かなパンの中から、子どもたちはすぐに選ぶ。菓子パンだったり上質でちょっとお高いパンだったりするけれど、
「僕はこのあんぱんにする。ゴマがのっててかわいい」「俺、この長いやつ、ラスイチだった。いえーい!」、長男と次男が代わる代わる喋る。

「それで、おかあさんは何にするの?」

うーん。私はこういうときに、いつも即答できない。

ナッツとドライフルーツが入ったハード系のパン。おいしそう。でも、こないだ朝に、さあ、いざ!と手に取ったら全然食べたくなかった。

つぶあんが入った、こぶりなのにずっしりと重たいあんぱんに惹かれる。でも、いつだったか朝に食べたら進まなかった。

こんなふうに、今食べたいものが明日の朝に食べたいとは限らない。明日の朝の私は今の私とはちがう。同じ私なのに、明日の朝を予測できない今日の私。

結局迷って、たいていはシンプルな食パンを買う。しぶい煎茶を淹れて、小皿に無塩のカシューナッツを数粒用意して、なんでもない食パンを1枚準備すると、あらまあなんとすてきな朝ごはん。シンプルな食パンは強く主張することなく、土曜の朝の私に寄り添ってくれる。

ここで悩ましいのは、いつもそうやって結局食パンを選ぶつまらなさだ。

「食パンがいい」のではなくて「食パンでよさそう」。明日の朝にちいさな不満があったとしても、今少し惹かれたパンを買う冒険すらしないのか。消去法で選ばれる食パンとはいったいなんなのか。
……ほんとうは明日の朝に買いに行けばいいんだよね。知ってる。

毎週こんなことを考えながら、私はまた今日もこれから子どもたちとパンを買いに行く。今日の私はなにを選ぶだろう。



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