海町ならでは
元漁師のおじいちゃんたちは、
毎日、基本的に毎日、群れている。
井戸端会議と呼ばれるものは女性に多いと思っていたので、
こちらにきて、珍しいなと思った。
元漁師のおじいちゃんたちは、集まることを好む。
海の情報交換だ。
海の天気は、陸の天気とは全く異なる。
「良い凪だ」「潮がきてる」「台風のうねりがある」
など、海を熟知してきた経験からくる考察が、自慢気に飛び交う。
また、どの魚の群れがそろそろくる、今どの魚が脂が乗って美味しい、など魚の情報も抜かりない。
もう趣味ですら船を出さないご年配の方ばかりだが、
陸から海を眺め、海の会話が絶えないのもまた、ロマンがある。
朝イチ、見晴らしのいい展望台で、ずーっと海を眺めている。
その中でも一人。釣りに出かけるおじいちゃんがいる。
裏で、こう、呼んでいる。
歯が無いおじいちゃん。
この方が、魚をくれたおじいちゃんだ。
展望台に行くといつも、釣果を教えてくれる。
「また、たくさん釣ったらやるからな」と。
そんなおじいちゃんたちと会うのが楽しみでもあり、
行くと絡まれるので、どうしようか迷う時もある。
元気でいてほしい、それだけを思う日々だ。