棋士と女流棋士の棋力差は急激に縮まってきている?

最近では女流棋士が棋士に勝つというのも珍しくなくなってきた。

現状、そのほぼすべてが福間香奈女流五冠と西山朋佳女流三冠によるものではあるが、着実に棋士と女流棋士の棋力差は縮まっているように思う。

中七海女流三段も奨励会から棋士になることはできなかったが、女流棋士になり、ここからさらに棋力を高め、今後訪れるであろう棋士との対局で勝利するだろう。

もちろん、その他の女流棋士もこの流れに続いていくのではないかと予想する。

この、棋士と女流棋士の棋力の差が縮まっていることの要因について考えてみる。

その要因というのは、一言で言うと将棋ソフトの進化に他ならないのだが、それがどのように結び付いているのかというのを具体的に考えてみたい。

そのためにはまず将棋の本質が何なのかを知る必要があるのだが、それは言うまでもなく「数学」である。

「将棋」が「数学」なわけだから、そこに必要な能力は数学的思考ということになる。

それがわかると女性がなかなか棋士になれないのは明らかと言えるだろう。

ただこう書くと、理系科目(正確には数学的思考)に男女差はないという人がいる。しかし、その根拠として言っている、理系科目の点数に男女差が見られないからというのは根拠にはならない。

なぜなら、試験というのは答えがあり、解き方があるため、準備をし、しっかりと勉強すれば得点できるからである。

そのため、理系科目、とりわけ数学においてもっとも重要と個人的に考えている、数学的思考があるかどうかは試験では判断することができない。

つまり、理系科目(数学的思考)に男女差がないと判断する根拠は存在せず、一方で、男女差があると考えられる状況(「根拠」と言うには明確なデータ(数値)、調査がない)はいくつもある。

それゆえ、数学的思考が苦手な女性はなかなか棋士にはなれないというのが今までの状況だと考えている。


そして、将棋においてこの数学的思考が最も要求されるのが終盤力と研究である。

しかし今、「終盤力」と「研究」のうち、「研究」の大部分は将棋ソフトが代替することになった。その結果、今までなかなか結果に結び付かなかった研究に費やしていた時間を対策と勉強に当てることができるようになった。

そのため、棋士、女流棋士に関わらず序盤から中盤あたりまでの局面では形勢に差がつきにくくなったのではないだろうか。

だから、対策と勉強をする人はそれなりの棋力に到達する一方で、それをしない人はどんどんと落ちていく。

そしてこれは同時に、対策と勉強をする人同士の棋力は横一線になる可能性があるとも言え、これが棋士と女流棋士の棋力差が縮まっていることの要因と考えられる。

これはまさに、理系科目の「試験」では男女差がないということと一致する。

しかし、これは「終盤力」と「研究」のうち「研究」に関してのみである。だからこれからは終盤力がより重要になってくると思われるし、それはまさに数学的思考がある人がより優位になることを示している。

それは終盤力であるこの数学的思考がずば抜けている藤井七冠が将棋界を圧倒しているということからも明白である。


つまり、今後、女流棋士は研究面では棋士との差がなくなるため、基礎的な棋力の差は縮まり、棋士に勝つ女流棋士は増えてくると思われる。その一方で、終盤力に関してはまだ疑問が残るため、棋士のタイトル戦等で一定以上の結果を残すのは難しいのではないかと考えられる。

だから今、自分が応援している4人の女流棋士は、そのいずれもが数学が好きかもしくは得意科目としている人を選んでいる。そこに、女性としての棋士、棋力がどこまでいけるかを注目しているのである。


最後に、最近読んだ数学者のエッセイに書かれていた興味深いことを書いておく。

「筆記試験の能力と研究能力はそれなりの相関はあると思うが、同じではないことは明らかである」

そして、

「研究に本当に向いているかどうかを調べるには数年くらいは研究させてみないとわからない」

とあった。

いずれも、今までのnoteの記事も含めて、自分が将棋における数学的思考について書いた内容と一致している。

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