流れ星(エッセイ/シロクマ文芸部)
【流れ星】
ニセモノの飛行機雲が流れると感じた真昼は、僕たちの本当の空はどこだと思ってしまうのです。
太陽が沈んであたりが暗くなってゆくと、とてつもないネオンサインが星のように流れ出します。流行に沿って、ついたり消えたり。用を終えたらすぐに違うかたちに替えられてしまうネオンサイン。余りにもたくさんありすぎて、変に眩しすぎて、未だに僕は心を開くことができずじまいです。
何もかも進化してゆく時代に、もう人工の流れ星をつくるのは簡単なことかもしれません。また、高額のお金を払えば、最高の場所でゆったりと座って、美味しいものを食べながら、確実に現れる場所で、本物の流れ星をみることができる時代になったとも思います。
わからないことも一瞬でわかってしまうAIの世界も始まった時代。僕たちは、いったい、これからどこへ流れてゆこうとしているのでしょう。
消えぬ間に、流れ星に願いを馳せることができると、その願いが叶うかもしれない。そのようなことが今でも語り伝えられています。TVでそれを聞いて、僕は少しホッとしたのです。
「そんなの科学的根拠ないので嘘!答えはこれ!」などという選択一択だったとしたら、人間の将来についての不安は渦巻くばかりです。
一瞬の輝きと偶然を与えてくれる流れ星は、人間に計り知れない想像力を与えてくれる...…。そんな風に僕は思うのです。「想像力」は未来まで駆け抜けてゆける人間の希望の星です。
何が嘘で何が真実なのかわからないほど、情報が溢れる時代。本当に願い事が叶うのか叶わないのかという結果よりも、心許せる人と共に、願い事が叶ってほしい、叶うかもしれない。そんなうれしい可能性を共有したいのです。
どれが最先端で、どれが時代遅れかよりも、心許せる優しい人を築き上げてきた時を、ひたすら見つめ続けていたいのです。
嘘みたいな星が流れ続けるネオンサインの街の中。僕たちは、どれだけ本当の空を見つめながら、流れてゆくことができるでしょう。僕たちはネオンサインのように、短い間に用無しになってしまう、駒ではありません。長いようで短い時を流れて生きる、れっきとした命なのです。
そして、胸の中心には常に心星という意志があるのです。それはとてもあたたかく。けれど、どこか不安で。
だから心許せる人よ。あたりのスピードに流されてお互いが散り散りにならぬように、あゝどうか、その手をこのまま離さないでいてください。
※シロクマ文芸部お遊び企画に参加させていただきます。よろしくお願いいたします。