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【くら詩note】幸福堂

新規開店の扉の前に
何やら長い行列ができていた

何のお店かわからないまま 
行列につられて 
次から次へと人は続いてゆく

誰かがぽつりと言った 
このお店には評判の 
幸福になれるグッズがあるの

誰かがぽつりと言った 
このお店には評判の
幸福になれるサービスがあるの

何もわからないまま
次々と人は並ぶ
どこまでもどこまでもつられて

やがて木製の小さな扉が開いた
人々は次々と 
扉の向こうに吸い込まれてゆく

大きな歓声が次々とあがる
開かれた扉の向こうから
聞こえてくる

扉の向こうには
何にも売られてなかった 

ただどこまでも広がる
生まれたての緑が続くだけ
ここちよい土の香りが染みてくる 

よく晴れたやわらかな 
太陽のまるい陽ざしが 
人々の見えない孤独を包んでゆく 

ただみんなは立ち尽くして
飛行機雲の空を見上げた 

ただみんなは座って 
生まれたての緑を見渡した 

ただみんなは寝ころんで 
とがめられない昼寝を楽しんだ 

そこには何にもなかった 
何にも売られてなった 
ただ幸福という言葉に魅かれた 

何処にでもいる人たちが 
みずからつくりあげていた
 
しがらみのない自由と
焼きたての 
パンの香りに似た陽ざしの中に 

わが身をゆだねる
ささやかな幸福 
次々と次々と人々は微笑んだ

ただ見渡す限りのセルフの光
何にも売られていなかった
開かれた扉の向こう 

幸福堂はやってくる
知らないうちにやってくる 
あなたの街にもやってくる


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