風の色(詩 /シロクマ文芸部)
風の色
晴れた日の空の下
真っ白なせんたくものが
風に揺れています
小さなマンションのベランダで
その真下を赤い自転車に乗った子が
りんりんりんとベルを鳴らし
海へと続くなだらかな坂道を
口笛を吹きながら下って行きました
背高のっぽの秋空の青さ
地面で静止する私の肩に
直滑降の陽の光
綿雲は音を立てずに流れてゆきます
あなたは今日
風を感じることができましたか
遠い風ですか
長い風ですか
それとも
今までに見たことのないくらい
生まれたての静かな静かな風ですか
すっかり大人になったようで
まだまだ煤けていない
私のからだの中の何処かに
風の吹き抜ける場所があったみたい
今日の風の色は
せんたくもの色
小さなベランダ色
下る赤い自転車色
海へと続くこの町の坂道の色
時がそよそよそよぎ
ベランダのせんたく物に
ゆらゆらと陽がおちはじめる頃から
だんだんだんだん夕暮れ意識の影の色
風はね
風には色がないように
見えるけれど色はあるのですね
吸ってはいて息をする
私たちのすーはぁのように
ありありと暮らしているのでした
この空のもとにある息吹に
ささやかに結ばれて重なって
初めて色づく風の色、音、色
小鳥が寝床に飛んでゆきます
昨日切った私の髪もゆれます
夕暮れすすきも続いてゆれます
暮らしをつつむ鼓動の息吹
気付いたときに見えてくる風の色です
とっぷりと
とっぷりと静かに
みんなみんなで今日に染まっています
※シロクマ文芸部、お遊び企画「風の色」に参加させていただきます。
よろしくお願いいたします。