夏の雲 (詩/シロクマ文芸部)
【夏の雲】
仕事の出先で
真昼のバスを待っていました
高層ビルとビルの間に見える
長四角の空をみていました
端から端を探しても
どこにも夏の雲は見えません
見えるのは
嘘なのか本当なのかわからない
雲一つない空がみえるだけ
今にも高層ビルの影の中に
吸い込まれてしまいそうな空
思わず心細くなって
思い出してしまうです
夏休み
田舎のおじいちゃんに
手を引いて
連れて行ってもらった日のこと
青田の揺れる道の上で
大きな大きな空の下で
タカいタカいしてもらってみた
遠い日の夏の雲のこと
どこかでクラクションの音
気が付けば
雑踏の向こうにバスのかたち
本当のことだけで息がしたい
本当のことだけで生きていけない
街
あの頃みた私の夏の雲は今
どこで生きているのでしょうか
かたちをかえて
どこかで生きているのでしょう?
狭い世界に押し込められて
お仕着せの優しさだとか
美しさだとか
知っていてもイエスと
言わされることが苦しいのです
やって来るバスに乗って今すぐ
全然知らない空の下に
行ってしまいたいのです
ヒートアイランドの
高速道路をガンガン超えて
ぼんやりとした長い長い時間と
デコボコ道に揺られて
終点ですよと降ろされた先で
会えたらいいのに
疑うことを忘れるほどに
嘘じゃないのと疑うほどに
むくむくとまっしろに広がる
背の高いあの日のような
まっさらな夏の雲に
そこでなら
そこでなら
人の目を気にせずになすがまま
大きな声を上げて
泣けそうな気がするのです
※お遊び企画、「夏の雲」に参加させていただきます。
よろしくお願いいたします。