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【エッセイ】テストで0点をとった話

あなたは0点をとったことがありますか?
私はあります。エヘン!!!!!(何を自慢してるのだ~!)

忘れもしない小1の算数の小テスト。
私は、1+1=田と書いたのです。
その他の計算も同じような感じで解答しました。

本人といえば、意外にも、テストの結果を待ち遠しく思っていたのです。というのもその頃、近所のお兄さんたちとクイズ大会をしたのです。そこで「1+1=?」の質問に「2」と答えると、「ちがいましたぁ。答えは、田んぼの田です!!」と返ってきたのです。

意味が分からない私は、なぜそうなるのかを聞くと、うまく数字と式を組み合わせれば、こうなるのだと!!

「お兄ちゃんすごすぎる!これは、大発見だ!!!」

そして私は、この大発見を先生やみんなに知ってもらいたくて、小テストの10問の解答を、すべてそんな感じで書いてしまったのです。

テストを返してもらう時、先生からすごい発見をしたと褒められるのでは??と、期待いっぱいだった私は、大剣幕の先生の顔に驚きました。

「何をふざけているの!!!」

「え?」

見事に=の二重線の上には、でっかくて大きな赤文字の0が!!!

「うそ・・・?!」

これは大発見だと思ったからと言い返したかったのですが、ふだんから厳しい先生の顔が、とんでもない鬼のお面になっていたので何も言えませんでした。そして、0点という迫る事実に口をふさがれ、大べそをかいてしまいました。

あの時の私は、算数も国語もごちゃまぜな感じで勉強していたのかなって思います。今思えば、なんてことしたんだよって思います。先生も驚いたことでしょう。本人は、超が10個付くほどに大真面目だったのですが。

大べそをかいてしまったけれど、これを機会に国語がますます好きになってしまったのです。算数には答えをはっきりさせる楽しさがあり、国語は自分の世界を広げる楽しさがあるというようなことを、子供の私にわかるように、先生は私のために教えてくれたのです。

それから後の日のこと、参観日の時でした。「私の家族」という作文を書いて、順番に発表しないといけませんでした。

クラスのみんなは、「お母さんもお父さんも優しいです。」だとか「妹がかわいいです。」だとか「みんなで一緒に楽しくご飯を食べる時間が嬉しいです。」だとか、とってもアットホームな家族の様子を書いていました。

先生は作文を書く前に言っていたのです。思った通りに、難しく考えずに自由に書きましょうと・・・・・・。

私はしまったと思いました。また、とんでもないことを仕出かしてしまったと・・・・・・。

「怒られる、読みたくない。どうしよう。」

とても不安でした。みんなと同じように、おばあちゃんが優しいとか書けばよかったと思いました。ですが、スルーすることはできず・・・・・・。

私は、もうどうにでもなれぃと、必死になって、参観日でよそのお母さんたちのいる中で、作文を読みました。

私の家族はたのしいです。おじいちゃんがおならをぶーっとすると、おばあちゃんがクサいと言います。そんなことないと言っていると思ったら、隣で、もっと大きなおならをお父さんがします。お母さんがクサいと言ったらクサくないといいます。私と弟は無茶苦茶クサいといいます。おじいちゃんが、ぶー。おばあちゃんが、ぶー。ぶーぶーぶー。みんなで、ぶー。

・・・・・・こんな感じの作文だったと思います。周りのお母さんたちから、笑い声がもれてきました。恥ずかしくて顔が真っ赤になりました。

「怒られる・・・・・・」

読み終えた時、怖くて下を向いたまま座りました。
そして先生は、こちらを向いて言ったのです。

「なんて、すなおな作文なんでしょう!よろしい!面白い家族ですね!」と、手をたたいてくれたのです。見渡すと、周りのお母さんたちが、バカにしてではなく、優しいニコニコ顔で笑ってくれていました。

0点だと思っていた作文が、花丸点なんて、信じられませんでした。

今振り返ると、おそらく、文章力うんぬんというよりは、そのままの「子供らしさ」という点が、そう言ってもらえた味噌なのかなと思いました。

私は、たちまち国語の自由さに心を奪われてしまいました。思った通りに自由に。読んでいい。書いていい。そんな原稿用紙の世界があるんだと。

あれから随分時間が経ちました。私は、国語の世界が、大人になっても自由の居場所になって、私の心を助けてくれるなんて思いもしませんでした。あれからずっとずっと、読み書きが大好きな私。

あの時取った算数の0点が、もう一つの世界を気付かせてくれたんだと。いい先生との出会いがあって、好きなことと出会えたんだなと。

もしも、今「自分は0点の人間だ」としょげている人がいたら、そうではないよって伝えたいのです。0点じゃなくて、花丸点をとれるあなたの世界が、きっと、きっと、暮らしのどこかにあるって。













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