CRYAMYあまりに衝撃的で伝説的な夜
渋谷の街の音が小さく聞こえる。轟音を浴びた耳がまだ余韻を残したいかのように他の音を拒否してるみたいで、それがとても心地よかった。
CRYAMYというバンドを知ったのはいつからだっただろうか。たまたまYouTubeで彼らを見つけて直ぐに耳が恋をした。CDからスマホへ落とし込むのが苦手だった僕は、彼らの音楽を聴く術はWi-Fiの繋がったところでのYouTubeしかなかった。月面旅行や世界という曲は、聴くたびにもう少し生きようとそう思えた。誰にも見えないところで、誰にも言わずにただ彼らに救われていた。
彼らの音楽がついにあらゆる配信サービスで配信され、ようやく僕はどこでも彼らの音楽を聴くことができるようになった。これで、いつでもどこでもCRYAMYがそばにいてくれるそう思うと嬉しかった。
そんな日々の中、ワンマンライブのお知らせを耳にして、僕は迷いながらもチケットを買った。新潟の田舎出身の僕にとって渋谷という街が少しこわかったのもある。1人で行くこわさ、クラブというこわさもあった。何せ僕は今まで銀杏BOYZのライブに二回行っただけの経験値しかない。それでも、今年は色んなものを生で観ると決めていた。目の前の景色ほど素晴らしいものはないんだと、目の前の世界は美しいんだと、そう感じる瞬間に出会う機会を逃したくなかった。そういった機会を逃す方がこわい気がして、僕はチケットを買った。
夜の渋谷に若者が集まる。10代から20代前半が中心だった。物事の善悪なんてまるで分からないけど、俺たちは音楽に救われに来ている、そんな青さが充満していた。800人がクラブクワトロの中に収まって、熱を帯びていた。
時間になって、CRYAMYがステージに立つ。それは全てが衝撃的だった。
「今日はCRYAMYと死んでくれ!!」
そう言ったくせに最後には
「死ぬなよ、お前が死んだら俺が悲しいから」
そう言ってくれる。
CRYAMYはここにいた800人に音楽を届けているのではなく、「あなた」という一人一人に音楽を届けているように思えた。僕は音楽をやってきたような人間じゃなくて、ギターも弾けない陰な人間だから一丁前に音楽を語れない。ロックというロックに出会ってしまったのもついこの間くらいのひよっこだ。ただ感じたことを書くならば、彼らの音楽はその轟音を繊細さと優しさで包み込んでいた。だから、その轟音には角がなく、うるささはどこにもなくて、恍惚としていて、心地よかった。耳栓必須という前評判を覆して、僕はその音楽を全身で浴びた。
拳を力強く突き上げる若者たち。興奮の弾みが反発してダイブする人。激しく光る照明に、掻き鳴らされたギター、繊細なメロディ、美しいブルーライトに映える、カワノさんのシルエット。神か、悪魔か、僕は今、何にも変えることの出来ない尊い現実と対峙していた。
「俺たちに世界は救えるかー!!!」
「アイラブユー!!!!」
そのシャウトで僕はこう思う。最後に聴こえた音がこの音でも別にいいや。
「最後にみんなにひとつだけ伝えたいことがある」
「来年未明、フルアルバム出します!アメリカ人とレコーディングしてきます」
ニルヴァーナをかつてプロデュースしたスティーブ・アルビニを迎えてアメリカでレコーディングするとの発表。
あまりに衝撃的で伝説的な夜だった。
最高の瞬間をありがとうCRYAMY。