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【読書の秋】読みやすくて面白いおすすめ現代純文学小説

読書の秋。本を手に取りたい季節、まだ本を手にしてないあなたに純文学小説をおすすめしたいです。

純文学と聞くと、芥川龍之介や太宰治などが書いたような古くて少し難しい印象を持つ人も多いのではないでしょうか。しかし、純文学はひとつのジャンルに過ぎず、読みやすくて面白いものもたくさんあります。今回はそんな現代の純文学小説をご紹介。

そもそも純文学って?

純文学(じゅんぶんがく)は、大衆小説に対して「娯楽性」よりも「芸術性」に重きを置いている小説を総称する、日本文学における用語。

Wikipedia

なんだそれって感じですよね。実はあんまり明確な定義はなく、純文学論争なんてあるくらいらしいのですが、個人的にラランドのニシダさんのこちらの動画が一番わかりやすかったです。

つまり、現代は純文学系文芸誌に掲載された小説は純文学くらいとしか言えないのかもしれません。
これは私の感覚ですが、純文学小説はどれも起承転結にあまりこだわらずに、人間の内面に問いかけるものが多い気がします。「さああなたはどう思う?」読み終わった後にいつもそう聞かれている気がします。自分の中で問いを深く考えることで自分を構築できるのが純文学小説の魅力だと思います。

今回は私が読みたてほやほやで書いた感想の記事と一緒におすすめをご紹介。リンクの記事はネタバレを含みますので、是非読み終わった後に。

1.影裏 沼田真佑

第157回芥川賞受賞作品。
岩手を舞台にした小説で、主人公と友人日浅の物語なのですが、文章の美しさに圧倒されます。岩手の自然、釣りの描写が繊細に表現されていて、その文学から風景を想像するのが楽しくなります。そして、崩壊というものを好む日浅という男の真相を知ったときあなたは何を思うのでしょうか。多様にエッセンスを盛り込んでいるのに、全てを調和させるその圧巻の文章を是非。

2.銃 中村文則

中村文則さんが新潮新人賞を受賞した、衝撃のデビュー作です。
ある日本物の銃を拾った大学生の物語。銃に魅了された主人公はどうなっていってしまうのか。少しミステリータッチで書かれた純文学小説です。銃という非現実的なものに含まれる危険性は別な形に変わって日常的なものに含まれているかもしれません。これが小説なのだと喰らった作品です。

3.コンビニ人間 村田沙耶香

第155回芥川賞受賞作品。
「普通」とは何かを突きつける衝撃的作品です。「私は人間である前にコンビニ店員である」という一節は、頭から一生離れないです。コンビニという身近なものをテーマに普遍的な問い、普通や幸せについて考えさせる作品です。

4.むらさきのスカートの女 今村夏子

第161回芥川賞受賞作品。
めちゃくちゃ面白いです。むらさきのスカートの女の観察日記なのですが、だんだんとその狂気性に気付きはじめます。今村夏子さんの小説は難しい言葉をあまり使わないのですごく読みやすいです。ストーリーも面白いのでかなりおすすめ。気付いたらあなたもむらさきのスカートの女の虜になっているかも。

5.ハンチバック 市川沙央

第169回芥川賞受賞作品。
これほど熱量が込められた本は読んだことがありませんでした。
筋疾患先天性ミオパチーという重度障害を持った主人公の女性の物語です。私は普通ではないのだという心の底からの叫び。それに対してどのような感情でいることが正しいのか、正しさよりもっと正しい何かを探っているような感覚。この本は生きている。それほどのエネルギーを感じました。

6.推し、燃ゆ 宇佐美りん

第164回芥川賞受賞作品。
推しの炎上から始まる冒頭。まさに現代文化を投影させた小説でありながら、普遍的な孤独、自分が普通になれない苦悩を描いた作品でもあります。
誰もが共感できる時代になった「推し」。推しのいる全ての人間に捧げる一冊です。

7.蛇にピアス 金原ひとみ

第130回芥川賞受賞作品。
スプリットタンでお馴染みのこの作品。内容は少々過激ですが、読みやすくてすぐに没入してしまいます。若さが思う存分につまっているこの作品。刺青にピアスの拡張。痛みとともにそれらが完成に近づき、主人公はどうなっていくのか。二人の男との関係はどうなっていくのか。若いあなたに読んで欲しい一冊。

8.火花 又吉直樹

第153回芥川賞受賞作品。
芸人又吉直樹さんのデビュー作。売れない若手芸人徳永と先輩芸人神谷の日常を描いた作品。お笑いは日本が独自に進化した文化であると思います。人はなぜ笑うのか。どうやったら笑わせることができるのか。そういった純粋な思いは、手段や方法によっては、純粋のままで受け取られなくなる。そこにある純粋な想いをこの一冊がすべての芸人をすくってくれるのではないかと思いました。私はこの又吉直樹さんの純真さが込められた本を、みんなにも読んで欲しい。

9.N/A 年森瑛

第127回文學界新人賞受賞作品。
私が一番好きな小説です。
女子高に通う女子高生が主人公のこの作品。
何かに属そうとする私たちであるけれど、本当は私は私でしかない。そして、誰もが私だけに向けられた言葉を欲しているのに、その言葉を贈る勇気はない。
改めて人と言葉について考えさせられた素晴らしい作品です。


以上9作品の紹介となりました。今年になってから純文学小説を読み出した、読書歴の浅い私ですが、本当に面白い小説ばかりでした。是非手に取っていただき、新たな本と自分に出会える秋にしてみてはいかがでしょうか。

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