【酒呑みエッセイ】物忘れが激しい30代独身男性の末路
午後13:00。
近所の幼稚園児たちが、先生に連れられて、楽しそうに散歩をしている。
その姿を横目に、疲労困憊の私は家路に着く。
仕事柄、夜型の私にとっては、いつも通り。日常だ。
誰もいないアパートの部屋の鍵を開け、玄関に荷物を放る。
その足で向かうのは、冷蔵庫。
今日は珍しく、帰り道にビールを買ってきた。
明日は休み。ご褒美だ。
普段は発泡酒。違いは分からない。
ビールを冷凍室に入れる。
20分後にはキンキンに冷えてやがる、至高のビールの完成だ。
期待に胸を膨らませ、風呂へ向かう。
風呂は好きだが、基本はシャワーで済ませる。
ゆっくり浸かるのは休日くらいだ。
風呂から上がる。
玄関に放った荷物の中から弁当箱代わりのタッパーを手に取る。
台所で洗う。
白米を詰め、冷蔵庫にある物を詰め込んだだけのタッパー。
これは午前7:00に食べている。深夜に働いている私にとっては、昼食だ。
最近、物忘れが激しい。
洗い忘れたタッパーなんて、地獄でしかない。
異臭、落ちない汚れ、忘れた自分への嫌悪感…
朝にお弁当箱を出された全国のお母さんの気持ちがよくわかる。
物忘れと言えば、先日、高速のインターチェンジを降り忘れた。
降りるインターチェンジを横目に、鼻歌を歌っていた。
案内するカーナビも、気持ち焦り口調になっていた。
無駄なドライブ、無駄な時間、無駄な出費となった。
洗い終わったタッパーをラックに干す…
ここまでが、私の帰宅ルーティンワーク。
毎日同じ作業をこなしている。これらの作業を忘れることは無くなった。
さぁ、あとは好きなだけ飲むがいい。
It’s Show Time!
スキップというには大げさな足取りで冷蔵庫に向かう。
冷蔵室から、常備している発泡酒を取り出す。
一日1回限定のASMRである開封音。
聞き慣れているが、思わず笑顔になってしまう。
乾ききった喉に勢いよく流し込む。
うまい、うますぎる。
これが幸せか。
今宵は長い。映画でも見ながら、心ゆくまで飲むとしよう。
It's Show Time!
カチンカチンに冷えてやがるビール…。
それは翌日未明に見つかった。