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日記をつける 日記をつくる

2023年12月10日(晴れ)

 いま日記界隈が賑やかです。

 個人的には小学生の頃につけていたのを思い出します。ある日、父親が分厚い「博文館日記」を買ってきました。学校で使うノートと違い、ハードカバーなのに未使用であることがうれしくて、何となく書きはじめました。

 何を書いていたのか今では全く覚えていません。不思議なことです。
多分、学校の出来事とかでしょう。ただ、縦書きの上覧にあるフリースペースにイラストとか漫画を描いたことが楽しかったようです。

 下北沢に「日記屋 月日」というお店があります(今でも博文館日記を売っていました!)。第4回「日記祭」に行ってきました。「日記」の「お祭り」です!みんなで日記を読み合い盛り上がろうというイベント。
新しい時代を感じます。

 そういえば、あるブースに「message in a bottle」というくだりがあって、透明のビンが置いてあったので、ついつい「ポリスですね」と言ったところ、「??」。スティングのことも知らなかったようなので是非とおススメしてきました。なんだか良いことをした気分…。

 もちろん、日記をつけるという習慣は昔からありました。作家が書いた日記などには多くの研究があります。でも、今の日記ブームはそれとは少し違う様相です。

日記を人に配る

 日記は日々の「記録」なので何をしたとか、その時どう感じたかといった極めて個人的な内容になります。人には言えないことも書いたりします。

 「日記祭」ではそうした個人的な内容を記した冊子や本が販売されていましたが、よく見ると複数の作家による共同制作という冊子もかなりありました。個人的なことを親しい友人と共有しています。

 やはり小・中学生の頃、「交換日記」というのが流行りました。わりとしっかりした冊子(ヨコ型)にイラストや趣味に関することを書いていました。そうした「交換日記」の延長なのかもしれません。

 面白いブースがありました。


レシートのように印字して、小さな「巻物」に。

 何かな?と最初はわかりませんでしたが、これは画期的!小さな紙に印刷して、レシートサイズに切り取って、小さく丸めています。

 誰かとすれ違いざまに、こっそり手渡すことができます(何で?!)
何だかいろいろな使い方がありそう。

 この作者の方はリアルな交換日記もしていて、定期的に京都の友人に日記帳を郵送しているそうです。手で確かめられるリアルなコミュニケーションも大切ですね。

 日記を他人に読んでもらうこと。家族ではない誰かからの反応を期待しているのかも知れません。多くの人にとっては「どうでもいいこと」「些細な日常」でしょう。でも、誰かのアンテナに引っ掛かり、思わぬ返事があるかも知れません。

 ネットで「日記を書くこと」と検索すると「ストレス解消」「記録になる」「書く練習になる」「自分を客観視できる」などといった効果がすぐに出てきます。悪しき効果主義です。これらは結果であり、目的じゃないです。

 「日記を書くことで掬われる(「救われる」の変換ミスかも知れませんが、「誰かに掬ってもらえる」という意味もいいな)こと、・・・ただこれまで、何だかんだで書いていて良かったなぁと思う時の方が多かった・・・。」ということばがフリーペーパーにありました。

 世の中全体、役に立つ知識ばかり(実はあやしい)流布していますが、「とるに足りないこと」「どうでもいいこと」こそ書きたくなるのかも知れません。大切なことがその中に込められていることを日記を書く人はうっすらと感じているのでしょう。

日記を削る

 トークショーで誰かが言っていました。「何度も書き直した。」「書く筋力がついた。」

 つまり日記は書きっぱなしじゃなくて、かなり推敲されて冊子になっているのです。

 はじめから人に見せることを意識して書いているのでしょう。

もう一つ、私が気になった作品がありました。


垂井真『たとえそれが最後だったとしても』

 日記なの?と思いましたが、作者に尋ねると「日記を削りに削った」とのことです。ちょうど彫刻のように。

「人とあうのが緊張する」
みたいなことが急激になくなってきた。
なんだか別の人になったみたい。

同上

あくまで健やかであるためには
この季節の中でどうすればいいのか

同上

 「これは詩みたいですね」と言ったら、作者の男性は「そう言ってもらえてうれしいです」と。日記を削りに削ると「詩になる」のかも。

 そして日記を削って「抽象度」を高めることで読者にも伝わるような要素が残るように思いますと作者はおっしゃっていました。

 そうか。日記をつけるという作業の後、日記に手を加えて「日記をつくる」という作業(これはかなり大変)にすることで全く別の作品になっていくようです。

 この垂井さんの作品が「日記」なのか「詩」なのか。これは人によって違うのだと思います。私はそのあいだにあるように感じました。

 このNOTEでも日記を書いている人がたくさんいますが、どんな気持ちでつけているのかなぁ。

 

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