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自由で美しい生活のまちへ 上田旅

 年末の長野へ行きました。上田市、そして信州最古の温泉地、別所温泉へ。

 真田幸村ゆかりの地、上田。でも、東京からのアクセスが良く、しかも温泉がありつつ、お洒落なパン屋やカフェがあるという点に惹かれていた。もう一つ、クルマが無くても鉄道で温泉地まで移動できることもいい。
 もうしかして、将来移住するかもしれない候補地としての下見という意図もあります。

 今回、心に残った場所を二か所の紹介をとおして、上田の楽しさを記しておきます。

 大正期、上田市が農民美術運動など革新的な芸術活動の中心地であったことは知りませんでした。その主人公が山本鼎。日本美術学校(東京芸大の前身)の西洋画科を出て、フランス留学を経て、上田で芸術活動を展開。帰国途中で立ち寄ったロシアで出会った「農民美術」と「児童自由画」という美術運動を全国に広げました。大正時代の自由な空気が町に広がろうとしていたのでしょう。

 上田駅から、しなの鉄道で一駅乗ったところに尾澤木彫美術館があります。年末なので開館しているか、わからないので電話で問い合わせたところ、大丈夫とのことですぐに伺いました。
 信濃国分寺駅を降りてしばらく歩くと、北ヨーロッパ風の建物が見える。豪雪地新潟の古民家を移築・改造したものらしい。
 普段着で飾らない館長の尾澤敏春氏の話をうかがいながら、展示作品を鑑賞。

 木片一つだけから彫った「ほうずき」の繊細な作品にまず圧倒されます。私が一番感動したのが「こっぱ人形」です。ご本人が世界を旅して集めた人形が多数展示されています(現在、専門の展示施設を計画中とのこと)。
 山間部に暮らす人々が冬のあいだの手仕事として、こんなにも素敵な芸術を制作してきたこと、そして全世界に共通する文化だったと実感できた瞬間です。木を相手にした仕事に関わってきた人々にとって、木を加工することは特技であり、楽しみだったのかも知れません。

 その後、大きな薪ストーブを囲んで私と娘は館長さんの芸術や教育への熱い思いを拝聴しました。かつて上田市には「山本鼎美術館」があったが、現在は「サントミューゼ」という複合施設の一部になったこと。小学校での美術教育がおろそかになっていることへの危惧など。
 この上田にあった、美術を身近なものとに感じ、子どもたちの自由な発想を育んできた文化をもう一度、新しいかたちで盛り上げることはできないか。
 若い世代が自らの感性で新しい文化的な活動を展開している現在、上田市は大きな可能性があると強く感じました。

 そんな豊かな感性に触れられたカフェを最後に紹介します。
 別所温泉にある「hanatoki」さんです。店内の落ち着いた雰囲気。テーブルに置かれた小さな一輪挿し。そして何より、おいしい珈琲!深み、温度、すべてが私に届きました。丁寧な仕事です。またスウィーツも甘すぎずに素晴らしい。

 私は趣味で陶芸をやっていて(一輪挿しが中心ですが)、店内に展示・販売されているカップやお皿も私の趣味とピッタリ。ああ、こんなお店を私もやってみたいと思わせるお店でした。
 最後に会計をしようとレジに行くその横に何と「こっぱ人形」が!店主のご友人が自ら講座で作ったものをプレゼントしてくれたらしい。農民美術の伝統が今、再び若い世代に見出されつつあることを実感しました。
 
 上田、そして別所温泉にはまだまだたくさんのすてきな場所があると思います。これからの上田は新しい生活を提案する場所になっていくという予感があります。私もそのなかで暮らすことになるかも知れないです…。

 次はクルマでしか行けないところにも行きたいです。

 

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