永遠のおでかけ日記 2023年11月7日(火)
11月7日(火)
「キュルキュルキュル!」と怪鳥の鳴くような音で目が覚めた午前七時、外はひどい風が吹いていた。
これから本降りの雨が降る予報が出ている。電車が遅れるかもしれないと思い、いつもより30分早くシャワーを浴びて家を出る。
人にはいろんな顔がある。いろんな場所を行き来して生きている。全部が上手くいくことは難しいけれど、どれかひとつが大きく破綻すると別の表情にも影響を与えてしまう。各方面を均したら平均点キープ、というのが良いんだろうなあ。
帰りの電車で「永遠のおでかけ」を読み終えたあと、間髪入れずに頭からもう一回読んだ。どこかあっけらかんとして、あけすけで、抱きしめたいほど優しい本だった。
あなたにはお父さんとお母さんがいて、他にも大切な人がたくさんいるでしょう。今はわからないかもしれないけれど、“その時”は必ずやってくるのよ。さっき会社を出る時にすれ違った人、あの人にも同じように大切な人がたくさんいて、今あなたの前に座って眠りこけてる人もそう。「誰かにとっての大切な人」だらけの世界に、あなたは今日も生きているのね。そうと知ったからといって、なにか生き方を変えようとか、考え方をあらためようなんてしなくていいの。この世界、実は大切なもので溢れているかもしれないと思えたらそれで十分なのよ。たまにそう思えたらね。
二度目を読み終え、左手に収まる文庫本が僕にそう伝えていた。僕は帰り道、益田ミリさんと小田急線の中でじっくり会話をしていたということになる。
この本の中での「お父さん」は、僕にとって「お母さん」であるだろう。僕はいずれ来る母の不在についてかなり頻繁に、そして意識的に考えるタイプの人間で、それは「いつか居なくなる」が「今ここに在る」を猛烈に輝かせることを、過去の喪失が教えてくれたからだ。
電車を降りていつもの帰り道、大切なものにひとつ気付けたようなあたたかい気持ちになった。(実際に今日は東京都心で11月の最高気温を100年ぶりに更新するほど暖かい日でもあった。)
今週末はcoromでの配信ライブがあり、翌週は下北沢ビッグマウスで弾き語る。今年も残り二ヶ月を切っている。何ができるか、どこまでできるか、どう伝えたらいいか考えている。僕はいま言葉を鍛えている。みんなを楽しませるためには。みんなで「Happy」になるには。
ベッドに入る前に谷村有美を聴いた。僕が初めてCDを買ったアーティスト。胸の支えが取れるようなポップソング。良い眠りにつけそうな予感のまま横になった。