【絵本分析】 『アレクサンダとぜんまいねずみ』~本編(前半)~
こんにちは! ぎり女子大生と申します。
絵本『アレクサンダとぜんまいねずみ』を、
私なりに分析しています。
今回はその本編(後半)+ まとめです。
1. とかげの役割
本編の続きから見てみましょう。
(前半をご覧になっていない方はコチラから!)
とかげってどんなイメージでしょう。
多くの場合はポジティブなイメージを持たれます。これは世界共通みたいです。
古代ローマの時代から、とかげに出会うと幸運が訪れると信じられていました。
その姿が墓石に掘られることもあったそうです。
日本でも「神の遣い」として縁起の良い生物と認識されています。
物語でもそのイメージが用いられ、
「はなばなと ちょうちょうの」色をし、
魔法を使えるという特別な存在として登場します。
多くは語らず願いを叶えるとかげは、どこかミステリアスです。
「紫」や「満月の夜」もそのイメージを膨らませます。
登場するとかげについて考えたとき、物語に対し2つの疑問が生まれます。
1. ウィリーはどこからとかげの噂を聞きつけたのか。
2. 紫の小石はなぜウィリーの箱の近くにあったのか。
以上の疑問から私は、
「全てはとかげが仕組んだことだったのではないか」
という推測ができると考えます。(あくまで私の推測です)
狭い世界で生きるはずのウィリーが、
「おもにアニーの話」しかできないウィリーが、
外の世界、ましてや
「こみちの はじの きいちごの しげみの ちかく」
というピンポイントな情報を、どこから仕入れることができたのでしょう?
とかげがウィリー又は他のおもちゃの潜在意識に噂として埋め込んだか
等、その方法までは分かりませんが、
「この噂自体、とかげの流したもの」
とみるのが自然ではないでしょうか。
また「くるひも くるひも」探し続けたのにもかかわらず見つからなかった
あの紫の小石がウィリーが捨てられた箱のそばにあったことも、
偶然ではないでしょう。
・とかげが紫の石を配置した
もしくは
・ウィリーが捨てられる箱の近くにだけ存在する紫の小石をあえて要求した
と考えられます。
つまり、とかげの役割は
・自由を願うウィリーに生命を与えること
そして
・アレクサンダに真の友情に気づかせること
だったのです。
無機質な感じがして、何も考えていなそうで、
実は言われた願いを叶えるロボットではなく、
能動的にこの世に大切なことを教えるヒーロー
といった立ち位置じゃないでしょうか。(願望でもあります)
(ストーリー全体を通し、
「捨てられてしまった他のおもちゃはなぜ助けられなくていいのか」
「何で線引きをしているのか」という疑問が残りましたが、
これについては、「犠牲もあるという現実を写しているのかもしれない」
そう解釈することにしました。)
まとめ: なぜ「児童文学」として優れた作品なのか
この作品が名作であることは言うまでもありませんが、
私なりに「なぜ優れているのか」ということを考えてみました。
子どもは大人になるにつれて、自立して生きていく大変さや苦しみを味わいます。「ずっと子どものままでいい」と考えてしまうこともあるかもしれません。
『アレクサンダとぜんまいねずみ』は、そんな時に思い出し、
読み返したくなるような作品です。
理由は、この作品で描かれる
相手を思いやる友情 や 主体的で自由な生き方 は、
いつでも人生において重要なテーマだからです。
子どもがより敏感に感じ取れるのは、友情の方でしょう。
この作品は小学2年生の教科書に掲載されていますが、
この頃から遊び相手としての友達の認識から、
「思いやりとは何か」を考え、それとは異なる「気遣い」、
上辺の関係なんかに気づくようになります。
同時に、お節介や偽善を考えずに素直に思いやりを
受け止められる年齢でもあります。
彼らはこの物語を読んで、
思いやりとはまさにアレクサンダのとった行動
に見られるものだと学ぶことができるのです。
損得感情で動き周りが見えなくなる若者が増えていると言われる現代で、
友を優先させるアレクサンダの姿は、模範としての重要さを増すことになりそうです。
もちろん、小学2年生といっても様々です。
メッセージを読み取るのがまだ難しい子もいます。
それでも、この作品には深い印象を抱くに違いない、と確信します。
アレクサンダの感情の高ぶりに合わせてドキドキしたり、
美しい絵に魅了されるはずです。
そしてその感動をきっと大人になっても覚えているでしょう。
・幼児期に得た感動を覚えていて、
ふとした時にまた読みたいと思わせること、
もしくは
・自分の子どもにも読み聞かせたい、と思わせること
これらは児童文学の重要な役割であって、
かつ価値を判断するのに重要なポイントだと感じます。
成長し再び読んだ時には、生きることへのメッセージをより強く感じるでしょう。
アレクサンダとウィリーが選んだ道は、けっして楽な道ではありません。
それは人生も同じで、いつの時代も生きていくのは大変です。
それでも、生きているということは「自由」で素晴らしい、
ということをこの作品は教えてくれます。
アレクサンダがウィリーを救えたのは
彼がとかげの元まで走ることができたからこその結果です。
自由があるから、自ら孤独から脱し願いを叶えることができ、
生きているから、友と喜びを分かち合うことができるのです。
『アレクサンダとぜんまいねずみ』は
子どもにとって 「読みたい」
大人にとって 「読みたい」さらに「読ませたい」
と思わせる絵とストーリーで構成され、
そのテーマは
時代を問わず人生を考えるきっかけとなります。
人の胸を打つことのできるこの作品は、優れた児童文学作品としてこれからも愛され続けることでしょう。
<参考文献>
・大塚浩 「レオ=レオニ研究 : 「アレクサンダとぜんまいねずみ」の考察を通して 」静岡大学教育学部研究報告 教科教育学篇 (2018年)
・大塚浩「小学校国語教科書教材基礎研究 : 「アレクサンダとぜんまいねずみ」の考察を通して」静岡大学教育学部研究報告 教科教育学篇(2017年)
・Leo Lionni's friends 公式サイト 最終閲覧1月8日
・Annie Lionni "Leo Lionni’s 'Unfinished Business'" 最終閲覧 1月8日
・The Reading Teacher "Alexander and the Wind Up Mouse | Read Aloud | With Text" (英語での読み聞かせ)最終閲覧 1月8日
以上、「本編(後半)+まとめ」でした!
これまで読んでいただきありがとうございました!!
これにて『アレクサンダとぜんまいねずみ』の分析を終わりたいと思います😄
以降何を書くかについては未定ですが、
絵本からは一旦離れ、専攻中の法律関係のお話もしてみたいと思っています。
お楽しみに💓