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参加サークル:七月のなまけもの

文学イベント東京 参加サークル 「七月のなまけもの」の紹介ページです。

剣と魔法と恋の異世界ファンタジー小説をメインに書かれ、頑張る女子がハッピーエンドを掴むものを好まれる作者、たつみ暁様のサークルです。


■ 「いつか、生きていたことを忘れる君へ、星咲く場所で」

『ジュリ。君の活躍のお陰で、この国を覆わんとしていた陰謀の雲は去った。国家 の代表として礼を言わせてもらうよ』
 きらきらと太陽の光が差し込む謁見の間で、玉座に収まる、整った顔をした金髪 碧眼の青年が、優雅に胸に手を当て、私に向けてゆるりと頭を下げる。
 いや、私にではない。
 パソコン画面の中で、現実とも錯覚する姿の青年が向き合うのは、黒髪に赤い瞳 を持つ、端正な顔つきの少年。身長は、私と同じ百六十八センチメートルに「設定 した」 アバターだ。
 名前はジュリ。私と似た名前にした。特に深い意味は無かった。無いつもりだっ た。ただ、この幻想の世界に身を委ねれば、現実でからっぽの私も、少しは世の中 の役に立っている気分になれるだろうか。そんな下心があるにはあった。
 「私」は、この世界では唯一無二の存在として必要とされている。でも、現実の私 は、からっぽだった。

 オンラインゲームのメインストーリーは適度なボリュームで、それが最新まで終われば、続きがリリースされるまで自由に、採集やものづくりをしたり、難しいパ トルコンテンツに挑戦したりする。
 謁見イベントを終えれば、今回のメインストーリーは完遂だ。城を出た「私」を 動かす私は、少々の虚無感にとらわれながら、さてこの後はどうしようとぼんやり 考えながら街の中を歩いていた。 
 このゲームには、幾つもの職業がある。私は前に立って皆を引っ張ってゆく盾役 や、戦場全体に気を配って皆を回復する癒し手は、性に合わないと自覚していたの で、後方から弓で攻撃する『アーチャー』を選んだ。今は成長して上級クラスの 『スナイパー』になっている。
 かれこれ一年遊んできたので、レベルは最大になっているし、戦闘での動き方も わかっている。初めて挑むダンジョンや、大勢で遊ぶボス戦でも、そんなに大きな ポカをかますことは無い。
 しかし、戦うメインストーリーが終わってしまった今、ほかのことを探さないと いけない。あまり手を出してこなかったものづくりをやってみようか。「当たる」 アイテムを作れば、一攫千金も夢ではない。ゲームの中で、自分の家を持って、好 きに家具を飾って遊ぶこともできるから、それを狙ってみようか。
 そんな思考をぐるぐる回しながら別の街で通りかかった大水車の前で、私は異様な光景を見つけた。
 三人のアバターが、一人のアバターを壁際に追い詰めて、蹴ったり殴ったり平手打ちをしたりしている。そもそもこのゲームでは、ほかのキャラクターを攻撃するP K(プレイヤーキリング)は、固く禁じられているが、感情表現という手法で、いろんな行動を起こす事ができる。そしてそれは、自分で非表示操作をしない限り、自身と、周囲 のキャラクターのチャット欄に表示される。三人は非表示にしていないようだ。名 前と、「平手打ちした」 「殴った」 「蹴りを入れた」が連続でログに流れてゆく。 これは明らかに、「他のプレイヤーの尊厳を損なわない」を破る規約違反だ。
 いじめられているのは、ミミ、というキャラクターのようだ。取り囲んでいる キャラクターより小柄な、薄茶毛の猫耳と尻尾の生えた女子である。近くを通りか かるキャラクターは、足を止めない。気にも留めない。よくある小競り合いだと 放っているのだろう。
 ゲームの世界とはいえ、良識を守らねばならないのは、現実と一緒だ。私の中の 正義感が震える叫びをあげた。私は咄嗟にキーボードに手をかけ、いじめ(わたし はこれをいじめととらえた)を行っているキャラクターの名前、場所、時間を、公 式サポートの迷惑行為報告ツールで送信する。キータッチの速さには自信がある。 一分も経たずに報告は終了した。
そして、彼らに近づいてゆくと、彼らに聞こえる範囲のチャットチャンネルを選んで。
『報告しましたから』
 チャット欄にただそれだけを打ち込む。やおら、ミミをいぴっていたキャラク ターたちの動きが止まった。動かしている人間が、コントローラーでカメラを回し て、「私」の姿を見ているのだろう。その間十数秒。
『あーあ、しらけちゃった』 『余計なことしてんじゃねえよ、クズ』 『お前もやっ てるくせに良い子ぶって、ゴミがよ!』
 私にしか届かないダイレクトチャットで、反省の欠片も無い、心無い言葉が飛ん でくる。
『真面目くさって、キモいったらありゃしなーい!』
 脳裏でフラッシュバックする笑い声に、こめかみをおさえる。その間に、件の三人は、怒ったり、がっかりしたり、石を投げたり、という感情表現を挟みつつその 場を離れていったので、頭痛をこらえながら追加報告を三十秒で終えた。

 過去の幻影が消えると、ひとつ、深く溜息をつき、私はミミにターゲットを合わ せ、パーティを組む誘いをかけた。パーティを組んでしまえば、周囲に聞かれない チャンネルで話ができる。
 ミミは、しばらくぼうっと突っ立って、私の誘いを受けずにいた。何だこの間 は。やっぱり、余計な手出しだったと困っているのだろうか。諦めて立ち去ろうと した頃、新しいパーティメンバーが加わる軽快な音が鳴った。
 パーティメンバーになれば、更に詳細な情報が見られるので、早速パーティ一覧を開いてミミを選ぶ。ふむ。セイントレベル99か。このゲームの現在の最高レベルだし、セイントは癒し手の中でも、シスターというレベル1から始めて順番にスキルを覚えてから昇格できる、回復と防御のバランスも取れた、オンラインゲームが 不慣れな人間にはうってつけのクラスだ。初心者中の初心者、というわけでもなさ そうだ。
『ごめんなさい。無駄なお世話だったですか』
 この子にも怒られるかもしれない。その確率を考えながらパーティチャンネルで チャットを打ち込む。ミミはしばらく棒立ちしていたが、やがて。
『いいえ。助かりました。ありがとうごじあます』
 微妙な誤字を挟んだ返事が届いた。



高校受験に失敗した私は、引きこもりになり、兄が買ってくれたオンラインゲームに没頭する日々を送っていた。 無為に過ごしていたある日、私は、ひとりのキャラクターが仲間にいじめられている場面に出くわす。見かねて助けた、ミミというキャラクターと、私の分身である「私」ジュリは友達になり、親交を深めてゆく。 しかし、ミミはとある深刻な秘密を抱えていた。

オンラインゲームをプレイする人。
人付き合いに思い悩む人。
生きることに一生懸命な人。
すべての人に贈る、青春の一幕。


■ 「悪役女帝に転生したけど、死にたくないので全力で破滅フラグを回避します!」



「わたし」は気づいたら、自分が書いた小説の悪役アーリエルーヤに転生していた。
このままいくと破滅する。
そんなの嫌に決まってるじゃろ!
……ので、破滅フラグを回避する為にあれやこれや奮闘する、異世界転生コメディ。親バカお父様、むっつり美少年、イケボ悪魔もいます。



■ 「いつか、生きていたことを忘れる君へ、星咲く場所で」

高校受験に失敗した私は、引きこもりになり、兄が買ってくれたオンラインゲームに没頭する日々を送っていた。 無為に過ごしていたある日、私は、ひとりのキャラクターが仲間にいじめられている場面に出くわす。見かねて助けた、ミミというキャラクターと、私の分身である「私」ジュリは友達になり、親交を深めてゆく。 しかし、ミミはとある深刻な秘密を抱えていた。

オンラインゲームをプレイする人。
人付き合いに思い悩む人。
生きることに一生懸命な人。
すべての人に贈る、青春の一幕。


「いつか、生きていたことを忘れる君へ、星咲く場所で」500円
「悪役女帝に転生したけど、死にたくないので全力で破滅フラグを回避します!」1000円

参加希望者(WEB作家さん・イラスト描きさん・漫画家さん)は以下でチケットを購入ください。


遊びに来たい方、作家の作品を買いたい方はこちら。


よろしければ、作品の自費出版の費用にさせていただきます。