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文学イベント東京Vol.3 参加サークル紹介:恋人と時限爆弾

文学イベントを開催!
WEB小説書きさん・イラスト描きさん・漫画さんの作品を販売する「文学イベント東京Vol.3」
日程 2024年10月14日(祝日)
会場 代官山T-SITE GARDEN GALLERY
【入場無料】

サークル名:恋人と時限爆弾
作家名・アーティスト名:鳴原あきら(Narihara Akira)


■ 美少女探偵 美咲 総集編


幼なじみの美咲ちゃんは、すごく頭がいい。美人だし、困っている人がいればすぐ手を差し伸べるんだけど、いつの間にか友達をへらしてる。私は大好きなんだけど、なんていうか、きまぐれ美少女名探偵って感じなんだよね……。

中学生の紫乃と美咲の目を通して、様々な女性同士の絆を描く、日常系ガールズラブミステリ。

★以下、いただいた感想です。

『美少女探偵 美咲 総集編』
読了しました。探偵のように振る舞える美咲ちゃんの能力の高さはもちろん、隣りにいる紫乃ちゃんも賢くて優しいなって思いました。現代社会は謎が解けたとしても、どうしようもないことが多い。そんな時、一人ぼっちではなくて、話し合える親友がいてよかったと思いました。
二人の関係が親友なのか、それよりも深いものなのか。小学生時代と中学生時代で大きく違うんですよね。名前の呼び方が変わっていたり。この先の別れを意識するようになったり。コロナ禍で様々なことに敏感にならざるを得なかったり。青春ならではの、心もとない感覚がとてもリアルですごい作品でした。

『美少女探偵 美咲 総集編』
『雪の女王』をかつて読んだことがあった者です。総集編を読めて良かったです。
中学生になった二人のエピソードを読んだ後に、小学生の頃のエピソードとして、『雪の女王』改め『上を向いて歩こう』が続いていました。当時を思い出すような、とても懐かしい気持ちになれました。
個人的な解釈になりますが、『上を向いて歩こう』という改題から、前向きなメッセージを読み取りました。周りから理解されない、下を向いてじっと我慢しないといけない、という時代はきっと終わったということ。上を向いていて良い。例えば、親しい女性同士が手を組んで歩いたっていい。そんな風に受け取りました。
手紙の第一発見者が紫乃ちゃんでよかった、と思いました。拒絶でも排除でもなく、共感の形で次世代の子ども達は受け入れた、というのは大きいです。大切な秘密として守られてよかったと思いました。当事者の大人達がどろどろしていても、子ども達はこんなにシンプルに均等な立場で考えられるのに、という対比もあって興味深かったです。
ありがとうございました。


■ 美少年興信所 所長の回想


美しい探偵が解き明かすのは、現実の事件の真相だけでなく、シャーロック・ホームズに秘められた様々な謎――
北原尚彦氏も推奨の傑作短編集!

ホームズをクイア・リーディングの手法で読み解いたものを下敷きにしたミステリ作品集です。
ホームズの元ネタを知っている人も知らない人も楽しめます。
シリーズ物ではありますが、読んでいなくてもこの一冊だけで読めます。
主人公の満潮音(みしおね)の過去を描いた書き下ろし中編「透明な依頼人」は必見!

★以下、収録作品にいただいた感想の一部をご紹介します。

・そう簡単には殺しても死ななそうな満潮音さんが瀕死だぞ!?ってなってたらめくるめく展開が待ち受けていたぞー。正統派ミステリーを辿りつつとってもラブラブでご馳走さまでした

・イイ! イイです! 儚げなことをさんざん堪能させておいて! させておいて! このたくましさ! イイ!

・甘さの中にもちゃんと物語があって、スリリングさが余計にらぶらぶを際立たせているような……?

・タイトルにつられてつい読んだ。うまいこと現代に変換&別方向にひねってて面白い。

・満潮音さんの鮮やかな謎解きに舌を巻きました。脳内アップデートを怠る偉い人に痛快な一言。本来なら一番怠っちゃいけない職種のかたですのにねぇ。

・ともあれ、スカッとしました! 楽しい作品をありがとうございます!

・しばらく会ってなかった友達の様子が痩せておかしい、という少年。満潮音の協力で、実はある仕事のせいだとわかり…。ラストまで、考えるほど病気か虐待しか浮かばなくてハラハラしました。意地っ張りの仮面が剥がれた音成君が積極的になる辺り可愛いです。ラスト大人たちの会話にもニヤリとしました。

・設定が凝っていて、話にすごい奥行きを感じてわくわくしました。最後のセリフが好きでした。満潮音さんかっこよかったです。

・まず登場人物達の名前が凄くカッコイイです!
話を進めて行く内にそういう事か!とどんどん辻褄が合って一気に読みましたw
まさか2つも3つも痴情のもつれがあったとはwそこからの最後の台詞、あの場面に繋がるのか〜!満潮音さんは内面までカッコ良かったです♪

・『ライオンのたてがみは悪い男性性の象徴』というセリフを見てライオンのたてがみの持つ役割について調べたら、近年では本当に強さの象徴としての意味しか無いって言われてるのに大ウケしてしまいました。新たな知見を得ました。物語を読む中でちょっとした知識を得る瞬間が堪らなく好きです。

・単に探偵と助手の関係萌えるよねというより、上流階級の子弟の鬱屈やデカダンへの憧憬など重く響く要素もあって興味深い。

★以下、書き下ろしの一部(主人公の回想場面)をご紹介します。

 病院のベッドの脇で、小松路夏は頭を垂れた。
「こんなことになって、本当に申し訳ない」
 満潮音は美しい微笑を浮かべて、彼を見上げた。
「君は何も悪くないよ。東京は暑いし、すぐに帰りたくないと思ってたから、むしろありがたいぐらいだ。しばらく、君のところで世話になります。よろしく」

 十九歳の夏、満潮音純は父母と共に軽井沢にいた。国務大臣の父は、例年行っている若い議員達との勉強会のために来ており、息子にも参加するよう命じたが、
「遠慮します。今年は山川先生の合宿のために来たので」
 山川聖人は彼の通う大学では人気の教授で、彼のゼミに確実に入るためには、事前にアピールしておく必要があった。この夏は誰でも参加自由の、ボードレールを読む合宿を開催しており、そこで顔を覚えてもらうのが一番よいとされていた。
 父親は渋い顔で、
「合宿でもその合間に、顔ぐらいは出せるだろう」
「僕にフランス文学科を選ばせたのは、あなたですよ」
「政治の世界に入るならフランス語は必須だが、くだらないものを読ませるために、大学に入れたわけじゃあない」
 母親が低い声でたしなめた。
「あなた。純を皆さんにご紹介する機会は、これからいくらでもあるでしょう。無理を言わないのよ」
 それで父親も、しぶしぶ引き下がった。
 そんなわけで、予定通り合宿に参加して『悪の華』を読んでいたのだが、同学年で小松路夏という涼やかな青年と親しくなり、彼の別荘に遊びに行くようになった。合宿の最終日、別れが惜しくて小松と悪ふざけをしていると、主人の危機と思ったか、彼の家のミニチュア・ブルテリアに、満潮音はくるぶしを噛まれてしまった。
 小松家のかかりつけ医は、十日ほどの経過観察を提案した。傷はたいしたこともなく、ブルテリアも狂犬病の予防接種がすんでいるが、念のため、ということだった。
 小松はとても申し訳ながった。そして「ご家族が東京に戻るのなら、うちで療養していって欲しい」という。病院にいてもやることもないので、満潮音は喜んでその申し出を受けた。
 小松家の別荘は、満潮音の家のものより更に高地にあり、朝晩は霧が深いが、とても静かで居心地がよかった。怪我人で、客でもある満潮音は、上げ膳据え膳の日々で、のんびりと合宿の復習をしながら過ごした。路夏の家族は、満潮音に最低限の挨拶しかせず、使用人達も万事控えめで、二人の交流を邪魔することがなかった。
 ある夜、ぽつりと満潮音が呟いた。
「彼の姿を見ないねえ」
「誰のこと?」
「僕をスコット号から助けてくれた青年だよ。名前はなんだっけ、祖父江くん?」
 満潮音がブルテリアに噛まれた次の瞬間、犬の名を呼んで制し、連れ去った若い男がいた。病院にも一度、慇懃に見舞いに来たが、その後は顔を合わせていない。
「ああ。だって冬真は使用人じゃないもの。うちの家庭教師の息子で、高校を出た後、町で働いているんだ。学者の家で苦労したせいか、さっさと公務員試験を受けてね。近くに住んではいるけど、ここに顔を出すことは、ほとんどないよ」
「君の犬、ずいぶん彼になついているなあ、と思ったけど、つまりシーズンオフは、あの青年が番犬の面倒を見てるんだね」
「そのたびに東京へ連れて行くのも面倒だからね」
「で、君がピンチとみると、相手に犬をけしかけるわけだ」
「いったい何を勘ぐってるんだい」
「彼がポールで、君がダルジュロスなのかと」
 小松は低く笑った。
「まさか。使用人ですらないって言ったろ。君こそ、大事なシンクレールがいるって噂をきくけど?」
 満潮音も苦笑で返した。
「それで僕がデミアンか。誰だい、余計なことを言うのは」

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文学イベント東京(スモール)
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