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妖怪になりたい

そろそろ人間に飽きてしまった。

と言いつつもまだ24年しか人間をやってないのだけど、いや、24年もやっていたらもういいだろと思う。30年も40年も50年も人間ができている人は尊敬に値する。

私は人間社会にうまく迎合できなかったので、今や人間にも妖怪にもなれない悲しき存在と成り果てている。

毎日決まった時間に決まった場所へ行ける人たちに想いを馳せては羨ましいようなバカバカしいような複雑な気持ちになって布団で作った穴蔵の中に帰る。

そうだ、妖怪になりたい。

妖怪人間ベムが人間になりたかったように、私は完全なる妖怪になりたい。

なるならたぬきがいい。きつねもいいなとは思ったけれど、神様の使いにはなりたくない。

元々私は比較的たぬき顔というのもあるが、何より酒とイタズラのことを考えて一日を終えたい。たぬきへの勝手なイメージではあるが。

カラス天狗もいいな。

修験者のような格好をして森を守りたい。そして上空から異常がないかだけ確認して、大きな木の上で昼寝をしていたい。これもカラス天狗への勝手なイメージではあるが。

九十九神になるのもいい。

神様になるのは気がひけるが、長年愛された食器に宿った魂になりたい。宿らせるなら身はスプーンがいい。なんかほら…まるくていいじゃん。

まるくていい、と言うならばメロンパンにもなりたい。

メロンパンのことが嫌いな男子高校生なんていないだろう。だからメロンパンになりたい。

男子高校生と言うならば、男子高校生にもなりたい。

いかにして女子にモテるか思惑を巡らせている、ちょっとくせ毛で一重の男子高校生になりたい。部活の帰り、昇降口で偶然を装って気になっていた鈴木さんを待ち伏せし途中まで一緒に帰りたい。そして自分と鈴木さんの間を阻む自転車に対して少しだけ呪いの気持ちを持った瞬間、鈴木さんがにこにこしながら自分の背後をまわり、隣にくる。僕らは一瞬見つめあって、照れ臭くなって声を上げて笑った。

なんの話だっけ

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