<少額訴訟記完結>1時間20分の敷金返還リーガルバトル
いざ出陣
簡易裁判所の待合室は狭い。
しかも、原告・被告兼用になっている。
大家と同じ場所で待機するのは嫌だったので、私が待合室に向かったのは開廷の10分前だ。
大家はすでに到着しており、その隣には、付き添いの若い従業員(大家の親族)の姿があった。
何度か顔を見かけたことはあるが、一度も話したことのない人だった。
一応、大家に「こんにちは〜」と挨拶をしてみたが、大人気なく無視された。
その昔、「おはようございます」と言ったにも関わらず、挨拶がなかったと大家に注意されたことを思い出す。
一体どの口が言っているのか。
時間になり、法廷へ案内された。
法廷という雰囲気がまるで感じられない簡素な空間。
さすが非都市部の簡易裁判所だ。
身分証を提示して席に着く。
大家は被告
大家に付いてきた従業員は被告代理人
(私は原告代理人、原告の夫は欠席)
という立場で出廷しているのにも関わらず、この従業員は、免許証も社員証も持ってきていないという…
え、手ぶらでくるとかある?
やる気ないなら来るなよ。
しかし、裁判官は「やれやれ、まあいいでしょう」的なノリで、この従業員の着席を許可した。
本人確認のテキトーさに呆れる。
裁判官と司法委員は推定60代の男性
裁判所書記官は推定20代後半の男性
なんの特別感もない円卓をみんなで囲む。
社内ミーティングかな。
少額訴訟の審理は、裁判官のリードで進行していく。
裁判官から質問される → 聞かれたこと(だけ)に答える
というスタイルだ。
私が大家のことを話すときは、大家の名前ではなく「被告」という呼称を使った。
普段の生活で「被告」という単語を発する機会は滅多にないので、ここぞとばかり口にした。
裁判中は、大家と従業員をガン見していたのだが、終始目は合わなかった。
少額訴訟についての説明
裁判官
「通常訴訟に移行することもできますが、少額訴訟のまま審理を進めてもいいでしょうか?」
従業員
「はい。通常の訴訟のままで大丈夫です」
裁判官
「?? えーっと、少額訴訟でいいということですかね?」
従業員
「……はい」
この従業員は、裁判官の質問を理解できているのだろうか?
明らかに頼りがいがなさそうなのに、なぜ大家に召喚されたのだろうか?
証拠調べ
裁判官
「被告。原告が提出した証拠書類の確認は大丈夫ですか?」
従業員
「はい、大丈夫です」
裁判官
「原告。被告の証拠書類の確認は大丈夫ですか?」
私
「いいえ、大丈夫ではありません。
被告の提出した請求書や領収書は、業者名などが隠されている状態です」
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