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カラスカタビラの花壇よ長く麗しく

季語:花壇(三秋)

からすかたびらのかだんよながくうるわしく

季語が決まらない

花壇とは、秋の花々を咲かせたところという意味の季語です。別名で花畠や花園といっても同義です。面白いことにお花畑というと夏の高山植物を指す季語になります。誰が考案したものやら首をひねりたくなりますね。

季語本来の意味合いでは「花々」ということなので、1種類では花々とは言えません。実際は他の草花も植えられている(下の方に緑が見えます)ので、全体像としては花壇といっても差し支えないでしょう。

ただ印象的だったのは紫の葉に小さな白い花の植物です。これをどうやって主役として成立させるかが悩みどころです。

この植物は、「オキザリス・トリアングラリス」といいます。和名では「紫の舞」や「カラスカタバミ」と呼ばれることもありますが、この植物の名前そのものは季語ではありません。

ところが、「オキザリス」は晩春の季語「カタバミ」は三夏の季語なのです。洋名では長すぎて俳句では扱いづらく、しかもオキザリスが入るので晩春と受け止められかねません。カラスカタバミだとカタバミで夏になってしまいます。紫の舞は優雅でよさそうですが、紫が紫式部(紫草とも呼ばれる別の植物)という季語と混同されそうです。中途半端に名称を入れると却って季節がわからなくなってしまいます。

そもそも、「オキザリス・トリアングラリス」はどの季節が旬なのか。4月から10月頃まで花が咲くそうです。南アメリカ原産の外来種ですが、そもそも季節の情緒を題材とすることが多い俳句には難しい植物でした。

カラスカタビラの花壇よ長く麗しく

季語なし、という技もあります。しかし、それで作りきるには技量不足と感じました。そこであえて、「オキザリス・トリアングラリス」を主役にせずに「オキザリス・トリアングラリス」が咲いている花壇を主役に置き換えることにしました。感動の焦点をちょっと広げてみた、と言ってもよいです。

そして、4〜10月とほぼ冬以外楽しませてくれる、このカラスカタビラの花壇を「長く麗しく」と褒めることで、「オキザリス・トリアングラリス」が咲いている花壇への感嘆を表してみました。

結局カタビラと花壇で季語重なりだ、と受け止められるリスクもあります。紫の舞の方が季語云々のリスクは少なくなりますが、「むらさきのまいのかだん」では「の」が続いてリズムが悪くなります。「むらさきのまいかだん」で2つめの「の」を省いたら意味が通じにくくなります。

紫の舞植わる花壇の麗しき」という句も候補に考えました。775の字余りですし、長く咲いているという特徴を省いてます。しかも、なんか古語が混ざっているような気もしてボツ。

もう悩みの渦でグルグルまとまらなくなったら、素直に書くのが一番。あとは口に出したときのリズム感。

カラスカタビラの花壇よ長く麗しく

875という上5部分の字余りです。上5を字余りにすることで、急いでいる様子を描写することもありますが、別に急いでもいません。

本当に小細工抜きで素直さだけの句でもうよし、ということにしました。偶然ですが、カラスカタビラの花壇よの部分が「」で頭韻を踏んでるのでリズムもそう悪くないですし。

未来の生活環境と伝統芸術の結びつき

現代語俳句というカテゴリーに挑戦しつづけていますが、季節感と無関係のものを主役に据えたくなることは、今後増えてゆくことでしょう。俳句の題材に新型iPhoneのデザインや性能、買い換えた喜びを伝えたい、そう思うこともあるかもしれません。そもそも家電製品などが俳句にふさわしいかどうか、という点についても様々な考えがあるでしょう。

まだ俳句の扉をちょっとのぞいてみた程度に過ぎないわたしですが、伝統芸術と新しい文化、生活の融合は避けては通れない道だと思っています。芸術の存在意義を問うことにもなるので、とてもこの場で語り尽くせるテーマではありません。しかし、根底には人間の感情が関わっているはずです。であるならば、おおよそ今は考えられないものも季語に加えてゆく必要があるはずです。

どういう過程で季語が増えてゆくのか、そのあたりは明るくありませんが、その必要性だけは切実に感じています。

ところでiPhoneの季語は三秋だと思いませんか。新製品発表が秋ですし。

ややこしい話になってきました。本日はこの辺りで。最後までおつきあいありがとうございました。

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ウールーズ(heureuse)
本質的に内向的で自分勝手なわたしですが、世の中には奇人もいるものだなぁーと面白がってもらえると、ちょっとうれしい。 お布施(サポート)遠慮しません。必ずや明日への活力につなげてみせます!