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連載「司法書士の契約書作成権限を考える」Vol.4 司法書士が行政書士法違反の罪に問われた事例が存在しないことを根拠とする主張
一度、ひとつの記事として公開した内容と基本的に同趣旨です。長すぎるので連載として分割することにしました。既に以前の記事をお読みの方は、本記事はスルーされてください。
グループは、「契約書を作成した司法書士が行政書士法違反とされた事例」が、民刑ともにWestlawとGoogleで検索する限りは存在しない、また、行政書士法違反の容疑で司法書士が逮捕された事例も存在しないとして、司法書士も契約書などの権利義務関係書類を作成できると主張する。
しかし、(本当にその存在を知らないのか、「懲戒処分例」であって「裁判例」ではないからあえて無視しているのかは不明だが、)Googleで検索すると、「司法書士の非弁行為 司法書士の行政書士法違反」と題するウェブサイトが検出され、認定司法書士が、行政書士の資格がないのに契約書を作成したことが行政書士法違反にあたるとして、福岡法務局長により懲戒処分に付された事例が示されている。
当該認定司法書士は、この懲戒処分に関して逮捕されることも、その後裁判所に無効確認や取消し請求等の訴えを提起することもなかったようで、その意味に限定して捉えるならば、確かに、本件は裁判例でもなければ、逮捕事例でもない。
しかし、権限のある行政機関等により、司法書士が法務局や裁判所への提出書類以外の契約書等の権利義務関係書類を作成することができないと判断されたという点では、裁判例や逮捕事例と何ら異なるものではない。
仮に、この事例の存在を知りながら「裁判例」や「逮捕事例」ではないことだけを理由として「契約書を作成した司法書士が行政書士法違反とされた事例は存在しない」と喧伝しているのであれば、悪質なミスリードであると言わざるを得ないだろう。
ちなみに、筆者は、この疑念を明らかにするため、グループの長を名乗る司法書士に連絡をとり、本事例を知らないのか、知っているとすれば、なぜ「契約書を作成した司法書士が行政書士法違反とされた事例」が存在しないといえるのかを質したが、司法書士の回答は、「あくまでもインターネット上の根拠不明の論説であり、そのような懲戒事例が実在するのか分からないから、対応できない」というものであった。
ウェブサイトの記載からすれば、懲戒年月日や福岡法務局長との懲戒権者も明示されており、その全てがウェブサイト運営者の創作や捏造とは考えにくく、また、少し調べれば、司法書士会ウェブサイトのアーカイブや、インターネット上で公開されている官報の検索結果からも当該懲戒処分の存在は推認できるものであるし、そもそも同じ『月報司法書士』の606号と627号を引用しているのに、471号だけは知らない、調べていない、読んでいないというのはおかしい。
しかし、あくまでも司法書士は厳密な客観的根拠を求めるということであったので、福岡法務局長に対し情報公開請求を実施した。しかし、保管期限徒過で破棄したということで、懲戒処分書を入手することはできなかった。
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そこで、東京都立中央図書館において『月報司法書士』のバックナンバーを調査したところ、当該懲戒処分の存在を確認することができたのである。
この事例によると、それが裁判例や逮捕事例には発展していないというだけで、「契約書を作成した司法書士が行政書士法違反とされた事例」は存在するのであり、それも大正時代あるいは司法代書人の話ではなく、平成23年ときわめて現在に近い時期の懲戒処分例なのである。
現在は、司法書士の懲戒処分権限は地方法務局長から法務大臣に移行されたとはいえ、懲戒処分の基準自体は変わっておらず、現在でも、本事例と同様の契約書等の権利義務関係書類を司法書士が行えば、仮に認定司法書士であったとしても、同様の懲戒処分に付されるものと考えられる。
まとめ
グループは、あたかも司法書士が契約書を作成して行政書士法違反に問われた事例が存在しないかのように語る。
しかし、「逮捕例」や「裁判例」ではなく「懲戒処分例」であるというだけで、それは厳然として存在するのである。
事例の範囲を「逮捕例」と「裁判例」だけに絞り込むことで、問題となった事例自体が存在しないかのような印象を与える議論は、「ご飯論法」であり、法律に詳しくない読者をごまかすような論法であると指弾せざるを得ないだろう。