連載「ユニオンリスク」 Vol.2 委員長は年収600万~、弁護士上回る20%"成功報酬"
プレカリアートユニオン元交渉員で、判例タイムスに掲載されたプレカリアートユニオン事件原告団長の私・宮城史門が、「ユニオンに入ると、ここがマズい!」という問題点を発信していく本連載。
第2弾となる本稿では、ユニオン特有の不透明な会計処理と、その問題点を論じたい。
労働組合の会計は本来「公開」
労働組合は、労働組合法第5条2項により、会計を、組合員に対し公開することが義務づけられている。
このように、法では、「すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告」の公開を明確に義務づけているのであるが、私が働いていたユニオンでは、定期大会で簡単な損益計算書を公開するだけで、「すべての財源及び使途」「主要な寄附者の氏名」は非公開とされていたのだ。
本来であれば、全ての仕訳帳や固定資産台帳などを大会の会場に備え置き、誰でも見られるようにするべきではないかと思われるが、では、なぜそうしないのか?
高額な専従者、役員の報酬
第一の理由は、役員の給与、賞与を知られたくないという点にあるようだ。
そもそも、助け合いを旨とする労働組合なのに、役員報酬を、仲間であるはずの組合員に知られたくないというのはおかしな話だが、平成31年当時ユニオンの書記長を務めていた男性に私が聞いたところ、「(数字を公開すると)統制がみだれる。」ということであった。
それでは、統制が乱れるような数字とは一体幾らかというと、下記の通りである。
執行委員長の月給は、なんと40万円!
なかなか結構な「数字」である。
これに加え、年に2回、1〜2ヶ月分の賞与を出しているから、ユニオン執行委員長の年収は、560万円〜640万円ということになる。
「プレカリアート」というだけあって、組合員は年収200万円にもならない者が多い。たしかに、委員長は自分の3倍ももらっていると知ったら、統制は「乱れる」かも知れない。
だが、それを踏まえても組合員に信任してもらえるか、つまり、組合員から、
「640万円を払ってでも委員長をやってもらいたい」
と思ってもらえるかどうか大事なのだから、助け合いを標榜する以上は、堂々と公開して然るべきではないだろうか。
裁判に訴えてでも搾り取る「拠出金」
第二に、ブラックユニオンの特徴として、法テラスの報酬基準や日弁連の旧報酬基準をも上回る20%もの拠出金を取り立てることが挙げられる。
団体交渉の「成果報酬」に相当する拠出金の取り立てにかけるブラックユニオン執行委員会の情熱は物凄く、平成31年2月の執行委員会では、ブラックユニオンを退会後に勤務先の会社から4500万円もの未払賃金(いわゆるバックペイ)を判決で勝ち取り、弁護士にその成功報酬を支払った元組合員から、既に退会しており、しかも、4500万円の判決との関係では単に弁護士を紹介したに過ぎないにもかかわらず、この元組合員から900万円もの拠出金を取り立てるとして、日本労働弁護団の嶋﨑量弁護士を代理人として訴訟を提起するとの決定までおこなっていた。
(もっとも、その後、退会した証拠となる脱退届が出てきてしまったので、訴訟はあきらめたようである。)
「裏切り者は便所の果てまで追いかける」というロシア大統領、プーチン氏すら思わせる、徹底的な「拠出金」の取り立てぶりである。
「取り立て」に遭う(元)組合員としてはたまったものではないが、会計を公開してしまうと、このようにして徹底的に取り立てた拠出金が、まるで倍々ゲームのように増額される委員長ら一部役員の報酬になっている実態も明らかになり、ひいては大会で執行委員を降ろされてしまうので、会計帳簿を公開していないものと思われる。
総括
このように、少なくともブラックユニオンでは、会計が公開されない中で、委員長や男性書記長といった一部役員だけが数百万円単位の利益を享受するという構造が確立されていた。
組合員としては、弁護士に依頼した場合よりも高い拠出金を搾り取られる仕組みであり、メリットが乏しく、アンフェアである。
委員長氏は中央大学(経済)卒、男性書記長に至っては京都大学(総人)卒とエリート揃いの執行委員会だったが、「プレカリアート」である組合員は、高卒者のブルーカラー労働者がほとんどだ。
損益計算書、貸借対照表といった会計用語すら知らない組合員が、私のように、会計を公開しないことが違法であるとして問題視することは考えにくい。
ブラック企業が、労働基準監督署や最低賃金の存在すら知らない労働者の無知につけ込んでサービス残業等をさせるのとまったく同様に、ブラックユニオンも、労働組合法の存在を知らない労働者の無知につけ込み、相当の利益を得ているのである。
幸運にもこのnoteを発見したあなたまで、わざわざ、かかるブラックな火中の栗を拾い行く必要はまったくない。
労働問題は、信頼の置ける町弁の先生へ。
もちろん、弁護士も一般的には自営業であり、依頼すれば着手金が発生するし、成功報酬も獲得するため、割の良い案件を望み、弁護士自身の利益のためにも勝訴をめざして活動するだろう。
しかし、いわゆる公設事務所(〇〇パブリック法律事務所、〇〇ひまわり基金法律事務所といった名称で区別できる)でサラリーマンとして固定給で勤務する弁護士もいる。
そして、実費と成功報酬以外の金銭を要求されることもなく、委任契約書の作成を義務づけられていることから、弁護士法などの法律を知らなくても、それゆえに騙されるというリスクは少なく、非弁提携とキックバックの授受が禁止されているため、紹介料名目で金を取られることも、紹介料が実質的に含まれる高額な報酬を請求されることもない。
ただでさえ会社とモメるだけでも大変なのに、加入したユニオンとまでモメる、弁護士を紹介してもらっただけなのに数百万も請求されるとなればたまったものではない。
労働問題は、ブラックユニオンと無関係の弁護士に相談しよう。