記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

十角館の殺人 読んだ

※ネタバレしかない

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!

紹介文より

わりと推理小説の中ではポピュラーなのかな?おすすめとして文庫本を貸してもらったので読むことに。推理ゲームは好きだけど、推理小説は読まない(そもそも小説をあまり読まない)読者だけど楽しめた。これどゆことなんか引っ掛かるな??ってところに付箋貼りながら読んだけど、それでも伏線見逃してた。 最後の方の一文で今までの予想と展開がひっくり返って、まさに推理小説だなぁって。ミステリーを味わう時のこのどんでん返し体験は、やっぱたまらないよね…!

以下引用と感想。まじでネタバレしかない 



決定的一文

「ヴァン・ダインです」

守須…

この一文すごい。鳥肌たった。これ一ページに一行だけ書いてあるんだけど絶対わざとだ、400ページくらいいっきに読み返した。もう全部ひっくり返ったしやられた~と思った。

最初に島に来た時から、ミステリ研の中では怪しいとは思ってたんだけど、館建築者の「中村青司」に登場人物みんなの関心が寄ってて、自然と読んでる方も「やっぱ中村青司生きてるのか…」って思わせられちゃった。だからエラリィの言うとおりミステリ研のメンバー内に犯人はいないかも?って、、思っちゃったんだよね~!それにメンバー全員の視点の文章があったから、アガサの死体を発見した時のヴァンの反応がどうしても犯人と思えなかった。
しかも序盤で江南くんが(コナン)ドイルっていうニックネームだったことがわかって、なら守須はモーリスなんちゃらでしょ!と勝手に想像もしてた。完全にミスリード… 取り調べの警部も「モーリス・ルブランあたり?」って聞いてるから、そう思わせるような苗字にわざとしたんだろうなあ。やられた。
あと推理小説初心者(?)だから犯行の流れとその時のお気持ち解説があるのに驚いた。親切だな~まあ『守須と千織は恋人同士だった』ことを知らなかったら、動機わからなすぎるもんね。

やっぱり…中村青司は殺されたのでは!?

ってずっと思ってたけど違うらしい、本当に無理心中らしい。別シリーズ読めば中村青司のこと知れそうだな~
でもこの小説だけだと、中村青司の狂気性を読者に教えてくれているのは弟の紅次郎だけだし、『本当に中村青司は嫉妬に狂って無理心中したか?』島田と江南君と一緒でちょっと疑問だったよ。不倫相手と実の子供が短期間で"殺され"て、正気で普通の生活をおくるのって、むしろ狂気じゃないかな…と思ってしまう。

「このところ毎日、家にいるが。学校は休みだから」
「そうかい?—二十七日の夜、ここに寄ったんだけど、呼んでも出てこなかったね」
「そいつは悪いことをしたな。締切間近の論文があって、この二、三日は電話も来客も居留守を決め込んでいたんだ」

紅次郎と島田の会話

これ読んだら「紅次郎ウソついてるな」って邪推しちゃうでしょ!怪しい怪しい。島田もずっと疑ってるしね。怪奇手紙書くためのワープロも持ってるし。
でもこれも作者のミスリードなんだろうなあ~~~やられた。

にしても守須が中村青司の無理心中をほぼ再現して集団殺人したことで、無理心中と思わせての殺人が可能ということがわかっちゃう。それに庭師だけ十角館の隠された地下室で白骨体になってるのすごく謎じゃない??外の崖に通じる通路にあったし、炎上する館から逃げようとしたとか?多分この小説内に書かれていない設定がありそう…このへんは続編読むことで納得していきたい。

以下、伏線だと思ってマークしていたところ:

「少しは控えるべきじゃないかな。昼間だからというだけじゃなく……」
「はん。おたく、まだあのことを気にしてるのかい。」
「分ってるのなら」
「分ってないね。あれからどれだけ経つ?いつまでも気にしちゃいられないさ」

一日目・島 ポウとカーの会話

序盤で、サークルとしてなんかお酒に負い目を感じる事件があったんだろうな…って思う場面。お酒にまつわるトリックがある伏線かなと思ったら何も無かった。

「(中略) 桜が疫病を誘う、というので、宮中でもこの頃」には鎮花祭が行われたりして。あの、ですから、その辺と関係があるんじゃ……」
「なるほどね」
「どうした、ヴァン。えらく静かだな」

一日目・島 オルツィ・エラリィ・ポウの会話

ヴァン怪しいな、桜と病気が伏線か?ヴァンの具合悪そうな様子と関係ある?と思ってマークしてたけど全然何も無かった。

「悪戯、ですか」
 どうも納得がいかなかった。
 江南は曖昧に頷きながら、藤椅子の島田のほうを窺った。組んだ膝の上に片肘を突いて、彼は何故かしら、やけに嬉しそうな顔でこちらを見ていた。

一日目・本土 江南

江南くんの納得していない様子が嬉しかったのかな島田 ホームズとワトスン

「ほら、『般若心経』っていうのがあるだろう。色即是空、空即是色、ってやつ。その”空”とは何ぞやについて、紅さんは研究していなさる」

一日目・本土 島田

般若心経の研究してるは絶対何かの伏線だと思った、色即是空の考えのトリックあるのかなって。何も無かった。

「あの店に入ろう。あの店がいい」
 通り沿いに、風見鶏の付いた赤い屋根が見える。
 看板に飾り文字で記された、〈MOTHER GOOSE〉というその店の名を読み取って、江南は思わず頬を緩めずにはいられなかった。

一日目・本土 江南

MOTHER GOOSEって英国の童謡で「がちょうおばさん」っていう意味らしい🔍 江南くんの頬はほっこりする名前を見た反応かな… これも何かの伏s何もなかった。

 少なくともこの時、例の殺人予告のプレートは文字どおりの意味しか示さないのだと知る人間が一人、確かにこの島にはいたのである。

二日目・島

この時点で島にいる=昼間に島にいるなら、やっぱりサークルメンバー内にいるんだ…!って推測するところか。なんか共謀者がいるのかな、実行犯とは別でって考えてた。全然犯人メンバー内にいた。

「恐らく青司様は、子供があまりお好きではなかったのではと存じます。」

二日目・本土 吉川政子

中村青司が中村千織をあまり可愛がっていなかったと判明し、怪文書と殺人の動機が薄くなっちゃったあたり。

 島田が呼び鈴を押した。家の中でその音の鳴るのが、かすかに聞こえた。だが、しばらく待っても応答はない。
「おかしいな。明かりは点いているのに」

二日目・本土 中村紅次郎の家の前

明かり点いてるのはフェイクで、本当は島にいるんだ!って思った。わざわざ居留守する理由がピンとこなかったしね〜。

「それにね、僕は思うんです。たとえば殺意なんていう極端な感情を長く心に維持しつづけるのは、普通に想像するよりも遥かに大変なことだ、と」

二日目・本土 守須

これを守須が言ったというのなかなかに…自分のことを言っていたのかぁ。極端な感情を維持するほど、千織を想っていたということね。または自分の犯行のモチベーションはそこまで長いものではない(十角館を伯父が買い取ったことを知って思い付いた?)から、最近の事件(千織の死)が理由というのを示唆しそう。

 何かしら引っかかるものが、記憶のどこかにある。何か——思い出さなければならない何かが。

三日目・島 ルルゥ

結局『何か』が何かは明言されてなかったけど、島の崖でボートか痕跡か見つけたのかな。

「確か『徒然草』に、違うタイプの有名な暗号歌があったと思うんだけど。何だったっけな、オルツィ」
 何気なしに耳を傾けていた一同が、はっと息を呑み、凍りついた。
「———悪い。つい」
 さすがにエラリイは強い狼狽を見せた。およそ彼らしからぬ失態である。

三日目・島

これはエラリイ犯人じゃないわと確信したとこ。と同時に彼もまた巻き込まれた犠牲者になる可能性があると思ったとこ…。

ああ、そうだ。島田の指摘どおり、やはり紅次郎こそが死んだ千織の父親だったのだ。とすれば、彼女を死に追いやった学生たちを真に怨んで然るべきなのは……。

四日目・本土 江南

読者も同じように考えてたよ!むしろ紅次郎なぜ怨まない??

「吸うか」
 と云ってポウが、煙草入れをエラリイの前へ滑らせた。
「ポウは賛成のようだね」
 一本取ってくわえ、エラリイはマッチを擦った。
「ヴァンは?」
「エラリイが正しいと思う。———僕も一本、いいかい、ポウ」
「構わんよ」

五日目 エラリイ・ポウ・ヴァンの会話

昭和みを感じる会話。タバコあげて賛成・和解を示すのハードボイルドだなぁ。
と思ってたのに青酸カリ仕込んでた人いて台無しだった。

「部屋数?客室は七つだったという話だが」
「実質的には六つしかなかったんです。伯父に訊いてもらえば分かりますが、一つはとうてい使える状態じゃなかったんですよ。雨がひどく漏って」

八日目 警部と守須の会話

だから個人部屋調査をポウが提案した時に、珍しくしっかり反対してたのかぁ。『伯父に訊いてもらえばわかる』って言うことで、自分は実際には見てないニュアンス含めてる気もする。

(あれは、断じて事故じゃない)
 無謀な飲み方をするような娘では、決してなかった。自分の心臓が弱いこともよく承知していた。きっと、酔って正体をなくした連中によって半ば無理強いされ、強く断るわけにもいかず、その挙句に……。
 彼女は奴らに殺されたのだ。
(殺されたんだ)

八日目 守須

ここさ〜ちょっと守須の推測が入りすぎじゃない?『決してなかった』のかもしれないけど、『半ば無理強いされ』『強く断るわけにもいかず』『殺されたのだ』っていう守須の想像だよね。そうであってほしいという願望にも思える…千織を失ったことを何かにぶつける理由になるから。
サークルメンバーも『事故だった』って言ってるし、無理やり飲ませて過失する人間にはあんまり…見えないんだよねぇ。飲み会の時に千織に何が起こったか、詳細に書かれていないから守須も読者も分からないままなんだけど、それを探ろうとせず(オルツィあたりに訊くこともできたのでは?)場のメンバーを復讐のため全員殺人って。守須が考える中村千織像≠実際の中村千織 なんだろうなぁ。
そういう歪んだ執着を持つ部分で守須と中村青司は似てるね。相手のことを想っていながら、相手のための行動は一切しない…。まぁ、守須が”自分たちだけの世界で愛し合った”みたいなこと言いながら”審判(犯行バレ)は他者に委ねる”(犯行詳細を書いて瓶詰めして海に投げた)行動は矛盾と迷いを感じるし、無理心中した中村青司の方が狂気極まってるか。

つらつらと好き勝手書きましたが…推理小説、面白いっす!読みながらいろいろ考えたり、予想を裏切られたりするの楽しい。ただ、推理小説って人が死ぬから、『この登場人物好き』って思っても死ぬかもなんだな、って…。ミステリ研みんな愛着わいてたのに全員死んでとっっても悲しい。
館シリーズは全10巻中9巻目まで出ているらしく、続きも読んでみたいって思った!島田と江南くんの活躍が気になるね。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集