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【詩】緒(いとぐち)

絡まり合った時の糸
何を縫いたいのか 誰と編みたいのか
分からなくなる

崩れた糸玉
持ち主不在の針が立ち尽くす

雁字搦めになる前に
立ち止まってみる

じっとしていると
針穴越しに
片方の緒を見つけることができる
少しずつほぐして
一本になったら
蝶結びして円を作ろう
内側で
美しいものたちが光をいだき始める


詩集『いとぐち』収録
©2023 Fumio Murakami

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