【Interlude】タイミング
ここは、とてもよく知っている人の住む、わたしの全く知らない空間。
こんなに長い間この人を知っているのに、この人が暮らしている場所を訪れるのは、今日が初めてだった。
いつもの店で昼食を摂り、いつもの古本屋か公園に立ち寄って、そのあと他愛ない話をしながら珈琲を一杯。それでさよならするのがいつものコースだったのに。
「ちょっと寄ってかない?」
どうして。どうして今日に限ってそんなことを言うの?
胸の奥がキクンと小さな音を立てたけれども、何でもないといった顔をして「うん。」と答えて、わたしは彼についてこの部屋までやってきた。
古びた畳敷きのアパート。片付いているとは言い難い部屋で、彼が淹れてくれた珈琲は、意外なほどに薫り高くて美味しかった。
「・・・すごく美味しい。」
「でしょ?珈琲淹れるのだけは、なぜか昔から上手いんだよ。」
喫茶店での他愛ない会話の続き。
でも、本当にしたいのは、こんな話じゃないことはお互いにわかってる。
いつから始まったのか思い出せないほど穏やかで優しいこの関係に、物足りなさを感じているのは、きっと、わたしだけじゃないはずなのに。
大人になればなるほど、「関係」を決めるのにはとても勇気が必要で、言葉に出してその「関係」を求めてしまえば、居心地の良い今のふたりではいられなくなってしまう。
これまでの他の誰かとの「関係」の中で、数えきれないほどたくさん傷ついてきた。だから、わたしたちは「関係」を決めずに、お互いに安全なラインの内側で何年も過ごしてきたのに。
さっきまで窓から差し込んでいた夕陽は、もうだいぶその明るさを失って、わたしたちの顔も、話す言葉も、刻々と濃くなる影の中に飲み込んでゆく。
わたしはなぜ、今、ここにいるんだろう。
何も言えずに、さっきから空っぽになった珈琲カップばかり見つめている。
ふと目線を移したあの人の手も、所在なさげに珈琲カップをもてあそんでいる。
この人の爪って、こんなきれいな形だったっけ。
そんなことを考えながら、夕暮れが口ずさむ運命の歌を頭の中で反芻していた。
・・・だめだ。わたしにはやっぱりこのラインは越えられない。
「暗くなってきちゃったね。そろそろわたし帰る・・・」
そう言いかけた瞬間、彼の手がわたしの頬にふれた。
そして、優しくわたしの名前を呼ぶと、猫を抱くみたいにわたしをそっと抱き寄せた。
だめ。目を閉じてはだめ。
こんな始まりはいや。ラインを超えるのならば、もっと心を震わせるような、決定的な言葉で越えてほしい。
それに始めてしまったら、終わる日もきっと来てしまう。
そうしたら、もう立ち直れないほどに傷ついてしまうに違いない。
不器用で、とても繊細な彼のくちづけを受けながら、そんなことが頭の中を駆け巡ったけれど、心の中で鳥が一斉に飛び立つようなざわめきに抗えず、わたしは、ゆっくりと目を閉じた。
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はい。ストップ。
いったんここでストップです。
就寝スタイルがベッドの場合、このまま続きを。
どうぞどうぞ。
でもさ。
布団だった場合さ。
どんなタイミングでこの後布団を敷けばよいの・・・・?
寝室があって布団を敷きっぱなし、という場合はセーフですよね。
そのまま続きをどうぞ。
でも、使わないとき布団は畳んでおく、というタイプの就寝スタイルだった場合、こういう時困るよね?
ちょっと待ってね、布団敷きますね、というのもなんですし。
ふたりで、いっせーのーせでシーツ掛けたりするのも変ですよね。
この過程を飛ばすと、畳、またはカーペットの上で、ということになりますよね?
夏なら良いですけど、冬は寒いよ?
わたし、和室に布団スタイルが好きで、ずっとこれなんですけど。
万が一、万が一ですよ。
この先こういうことがあった場合、どのタイミングで布団を敷いたらいいのか、本気で悩みます。
・・・みんな、どんなタイミングで敷いてるの?
※本記事はわたし作詞作曲の楽曲を文章化したものです。そのうち歌うね。