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_scene1
scene1,
電車に揺られながらそっと目を閉じる。
今日1日を脳内で再生する。
何をしてもうまくいかない
何でもないことが引っかかる、そんな日だった。
誰にも聞こえない位、小さなため息をつく
_こうして乗ったまま、家の前まで着いたらいいのにな。
スマホを取り出す。呼吸するようにSNSのアプリを開く。
現実であり、非現実的な世界。
四角い枠の中の輝きたちは
少しも陰りのない笑顔で水を弾いている。
全てがうまくいっているようで、羨ましくて、悲しくなる。
最強に見える彼女達の裏側
枯れないようにと必死で根を伸ばしている地中を
嵐にさらされて傷んだ葉や枝を
想像する余裕も今はなくて、そんな自分が嫌になる。
もっと心の底から、すごいね、いいねって感じられたらいいのに。
いつの間に私は、こんな風に。
さっきよりも少し大きなため息をついて、ふと目線を上げる
向かい側の列みんな、自分と同じ格好。
現実が、非現実の詰まった箱を操作している。
_____
改札を出て右に曲がる
_コンビニでも寄って帰ろうかな。
ふと、目に入る、角にあるフラワーショップ
足が止まる。
いつもは通り過ぎるだけなのに
なぜだか今日は心が惹かれる。
みずみずしい果実を見た時、かじりつきたくなるような
説明し難い感情が、体の奥で滾っている。
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10分後
抱えきれんばかりのお花たちとグリーンを両手に
さっきより軽い足取りで帰路を急ぐ。
_帰ったら、しばらく仕舞っていたあの花瓶に飾ろう。
クリアなピンクにブルーのお花、きっと合う。
グリーンは窓際に置いて、今度可愛い鉢も買ってこよう。
心の栄養に、節約なんていらないのだと知る。
囲まれて、吸い込んで、自由になろう。
どれだけ単純なものでもいい
気のせいなんじゃないって人から思われてもいい。
こうして少しずつ、元気になる。
自分だけの現実を、抱きしめるみたいに。
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