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ショパンのポロネーズのリズムについて

ショパンに限らずポロネーズでは次のようなパターンがよく見られます。

しかし音符の長短関係を示すだけでは「これがポロネーズのリズムだ」とはとても言えないと思います。音符の長短関係はさらに様々なリズム的な解釈の可能性を含んでいるからです。

ショパンの場合では、次の譜例のように、このパターンの1拍目裏の16分音符から開始して、次の小節の最初の8分音符まで続くグルーピングを意識する必要のある場合が極めて多く見られます。この形は、私がウラシャと呼ぶ形の3拍子ヴァージョンです。
(※ウラシャについてはコチラコチラを参照下さい。)

また、1拍目の裏が16分音符に分かれていない場合や、2拍目や3拍目の裏が16分音符に分かれている場合もよく見られます。


実例を挙げて行きましょう。

次の例はショパンの作品53『英雄ポロネーズ』のコーダ冒頭です。1拍目裏から「裏→表」が連続していることに注目して下さい。次の小節の先頭の音まで続いて、また1拍目裏から新しくそのパターンが始まります。


この箇所の左手だけを聴いてみるとより分かりやすいかもしれません。なおこの部分は、私が別のページでスカート構造と呼んだものになっています。

ショパンは『英雄』において、8分音符の桁の繋げ方によってこのリズムを明示しようとしています。しかし、一貫してこのような記譜法をしているわけではありません。よって結局は分析者が判断するほかはありません。


他の例として作品44のポロネーズの中間部を挙げておきます。1拍目ウラから始まって、次の小節の1拍目のオモテで終わる構造を意識して下さい。


作品40-1の『軍隊ポロネーズ』の中間部もこのタイプです。


シンコペーションを用いたタイプ

赤い矢印で示していた結びつきを1つの長い音符に置き換えるとシンコペーションを用いた形になります。

次の例は『英雄』の中間部の終わり付近からのものです。左手のオクターヴのC音がシンコペーションの位置を占めています。

このシンコペーションはいわゆる「食う」タイプではなく、遅れるタイプ(裏拍)のシンコペーションであることに注意して下さい。シンコペーションについての解説はコチラを御覧ください。


同様の例を作品61の幻想ポロネーズからも挙げておきます。

次の例では完全にシンコペーションの連続に変わっています。

作品26-1からも次の箇所を挙げておきます。第32小節のポロネーズの典型的なリズムと、第33小節のシンコペーションの音形が連続して現れています。


これら「3拍子のウラシャ」の形は、あまり一般に認知されていない形ですが、ショパンの理解のためには必ず知っておくべき形であろうとおもいます。

バラードではこれを2つ並べた6/8拍子ヴァージョンがしばしば見られます。

その一方で、ワルツやマズルカでは拍のウラを意識させた形はほとんど見られず、同じ3拍子ではあってもポロネーズとリズムが大きく異なる理由となっていると思われます。

カテゴリー:音楽理論

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