3+3+2のリズムについて
「3+3+2のリズム」というのは次の譜例の上の段のようなパターンを言います。ポピュラー音楽ではよく使われるリズムですが、決まった名称がまだ無いようです。トレシーヨ(tresillo)というスペイン語の用語があるそうですが、これは本来3連符を意味しているということなので微妙かもしれません。
シンコペーションの解説のなかでも触れていますのでこちらも参考にしてください。ただし3+3+2のリズムは厳密に言うとシンコペーションとはちょっと異なります。
3+3+2のリズムを特に多用したのはピアソラ(1921–92)です。彼の代表曲であるリベルタンゴではひたすらこのリズムが繰り返されます。次の動画はヨー・ヨー・マによる演奏です。
この記事では歴史的な話ではなく、リズム自体の理解について考えていきましょう。
ヘミオラとの関係
先程上げた譜例ですが、次のように最後の1拍を隠すとどうなるでしょうか?そうです、「ヘミオラ」と同じ形になります。
ヘミオラというのは、3拍子において、普通の3つのビートと同時に、小節を2分割した変則的なビートを重ねたものです。
(※ヘミオラとはギリシャ語で3:2とか、1.5という意味です。古代ギリシャのリズム論では1:1と2:1と3:2が基本的な関係とされていました。)
つまり4分音符のビートと、付点4分音符のビートが同時に進行した形です。
すると、次のような形をまず考えて、3拍で区切れば普通のヘミオラ、4拍で区切れば3+3+2のリズムということになる、と考えられます。
つまり、3+3+2のリズムとは4拍子のヘミオラだということが分かります。
しかし3拍子の普通のヘミオラと違って、3+3+2のリズムでは最後が付点音符ではありません。だからこんな説明はインチキではないか、と思われるかもしれません。
でも、最後に余りがある別の形を我々はすでに普通に使っているとしたらどうでしょうか?
その形とは、3+1のリズムと2+1のリズムです。つまり、付点リズムとスウィングのリズムです。
つまり、3+3+2のリズムとは、ヘミオラという一族の一員であり、付点リズムやスウィングのリズムと親戚である、ということになります。
ちなみに、タンゴのリズムの起源と言われるハバネラのリズムは次のようになります。
3+3+2のリズムと2+1のリズムの組み合わせ
3+3+2のうちの「3」の部分をさらに2+1に分割すると現代のポピュラー音楽でもかなりおなじみのリズムとなります。
これを半分の音価で書くと次のようになります。
スコット・ジョプリンの『エンターテイナー』には、至るところに3+3+2のリズムが隠れています。
冒頭の下降音形は3+3+2でできています。
第5小節では、3+3+2の全体が16分音符遅れるシンコペーションとなっています。これは「3」をさらに1+2のシンコペーション的な分割で置き換えたものです。
カテゴリー:音楽理論