見聞きしただけの情報を発信しない。信頼をつくるために大切なこと
『痛い失敗体験から学んだ 愛される書籍の成功の秘訣(仮)』、今回は、最近の出来事から思い出した、新人編集者時代の失敗体験です。
外出自粛生活が始まった2年前からYou Tubeをよく観るようになったのですが、誰でも気軽にチャンネルが持てたり、ブログやSNSでメディア運営ができる時代だからこそ、知っておいてほしいなと思っています。
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編集脳アカデミーの藤岡信代です。
電子書籍出版サポートとコンテンツビジネスのコンサルティングを行っています。
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新型ウイルスの流行で自粛生活をして良かったことの一つが、ドラマを好きなだけ堪能するようになったことです。特に、韓国ドラマにどハマリしています。
最近、AmazonのPrime Videoでは物足りなくなって、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』を観たすぎて、ついにNetflixに加入。そんな中で、You Tubeで「ん?」と思う動画に出合いました。
■つぎはぎの情報は、果たしてコンテンツなのか?
それは、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』を題材にした動画でした。大好きなドラマなので飛びついて観たのですが、登場人物の名前も、シーンの説明も少しずつ違っている。
あやしい。
これは、本編を観ていないのではないか?
特に、ドラマでは重要な人物である、ウ・ヨンウ弁護士(主人公)の上司役の画像が一致していないのです。これは、ファンから見たら致命的な間違いです。
「You Tubeの情報を継ぎ合わせてつくったのではないか?」という疑惑が浮かびました。
You Tubeでは、ドラマの放送直後からたくさん細切れの情報が配信されています。それをたくさん見て、解釈して、動画の筋書きを書くことはできると思ったのです。
サムネイル画像が流れてきたときのウキウキした期待感と、動画を観たあとの失望感。
がっかり……を通り越して、軽い怒りすら覚えました。
■体験していないことを発信することの危険性
このがっかり体験から思い出したのが、新人で配属された子ども服ファッション誌での失敗体験です。先輩から注意され、自分の思い上がりに気づいて恥ずかしさでいっぱいになり、今でも忘れられない体験です。
そのとき私は、モノクロページの情報記事を担当していました。
ちょうど夏休み時期ということで、親子で楽しめるミュージアム情報を特集することになりました。5ページほどの企画だったので、親子でおでかけしている写真を撮ったり、いろいろな切り口でコーナーをつくり、小さな情報欄として、「全国のおすすめミュージアム」のデータを載せる予定でした。
その小さなコーナーは、自分で調べてミュージアムをセレクトし、データのみを載せようと考えていたのですが……。指導してくれていたベテラン編集者の先輩に、「あなたが選ぶの?」ととがめられたのです。
その瞬間は、それが注意を受けるようなことだとは思いませんでした。
むしろ、「編集者の仕事って、こういうことなのでは?」とすら思っていたのです。
小さなコーナーだから、まぁいいでしょ……と、ため息交じりにその場は通してもらえたのですが、いざ原稿を書き始めると、自分の甘さや思い上がりが痛いほどわかりました。
私には、そのミュージアムをおすすめできる根拠が何もないのです。
情報を調べることは、いくらでもできます。当時はインターネットは普及していなかったけど(なんせ1991年ごろです)、情報誌など紙のメディアで、十分に情報が探せました。
でも、そこが「親子におすすめである」という確信は、私にはないのです。すべて見聞きしただけの情報だから。
たとえ小さなコーナーで、データだけを載せる企画だったとしても、「そのミュージアムを選んだ根拠」が必要で、そのためには「体験して知っている」ことが最も重要だということ。
そのためには、体験に基づいてセレクトができる人に取材をするのだということ。
情報を切り貼りすればできるような記事でも、取材という手間をかけて記事をつくる。それは、読者の「雑誌への信頼」を裏切らないための原則だったのです。
■情報があふれている時代だからこそ大切にしたいこと
私がたまたま目にしたYou Tubeの動画は、いわゆる「二次情報」を編集した情報です。
けれども、本来は、「一次情報」をもとにするのが、メディアの原則です。
いまの時代では、二次情報を編集することも、ある意味、必要なシーンがあるかもしれません。
ですが、最も信頼できるのは、「体験から得られた情報」ということは、変わらないと思っています。
むしろ、情報がコピーされ、二次情報があふれればあふれるほど、人は、一次情報である「体験者の声」を求めるのではないでしょうか? コミュニティに注目が集まっているのは、その現れだと感じます。
メディアを誰でも無料で持てるようになったからこそ、信頼される発信者でありたい。
見たことがある、知っている。その先にある「体験している」ということの価値を、個人がもっと発信できると良いなと願っています。
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