たった3人の読者の言葉から、大ヒットが生まれたお話
『痛い失敗体験から学んだ 愛される書籍の成功の秘訣(仮)』、前回は、「読者を知る」をテーマに書いたのですが、その延長にあるエピソードを思い出しました。
私が、下降線を描いていたインテリア雑誌(と雑貨の雑誌も合わせて2誌)の立て直しのために編集長になり、その後、長く苦しい低空飛行から上昇気流に乗るきっかけになった体験です。
前回の記事は、こちら。
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編集脳アカデミーの藤岡信代です。
電子書籍出版サポートとコンテンツビジネスのコンサルティングを行っています。
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22年間の出版社勤務の間、15年はインテリアと家づくりの分野に携わりました。いわば私の専門分野なのですが、下降し始めた雑誌を立て直すのは容易ではなく、いろいろ考えてもなかなか結果が出なかった。むしろ「読者の言葉」が、大ヒットにつながったのです。
■「3人の読者から立て続けに聞いたんですけど…」
それは、インテリア雑誌の企画会議のときでした。
編集部には、社員編集者とフリーランスの契約編集者が在籍していたのですが、フリーの編集者の一人が、「カフェのような家」というタイトルの企画を上げてきたのです。
企画の主旨には、取材先で3軒、立て続けに「カフェのような家を建てたくて……」という言葉を聞いたと書かれていました。2009年ごろのことです。
その文字を目にしたとき、私は「なんとなく感じていたことが、言葉になった!」という気持ちになりました。いわゆる、ピン!ときたというアレです。
編集部のスタッフも同じでした。
「カフェのような家」で大盛り上がりになり、すぐさま特集テーマに格上げし、「カフェのような家」を軸とした企画を構成しました。
その特集の号は、それまでにない初速で、勢いよく売れていきました。
久々の大ヒット! リニューアルを経て、じりじりと上向いてはいるものの、低空飛行を続けていた実売部数が、ポンと跳ね上がりました。
読者がいま求めているのは、「カフェのような家」。
確信が持てた瞬間から、インテリア雑誌は復活の上昇気流に乗っていったのです。
■数の多さではなく、その気持ちに共感できるかどうか
「カフェのような家」は、その後も何度か特集にし、別冊のムックとしてもドル箱になったので、まさに金鉱を掘り当てたようなものです。
でも、たまたま当たったのではなく、見つけたのは「編集者の力」だったと私は思っています。
私ももちろん数多くの取材に行きましたが、インテリア雑誌の取材は、読者のお宅に取材に伺うのが基本です。そこで2~3時間、インテリアの撮影をしながらじっくりお話を伺います。そして、それを誌面にするためにレイアウトラフを描き、デザインが上がってきたら原稿を書き、取材したお話が読者に伝わるようにとエネルギーを注ぎます。
いつも読者のそばに立つようにものを見て、文章を書いているのです。
だから、読者の気持ちを代表するかのような言葉に、すぐさま共感することができたのだと思うのです。
デジタルでビッグデータを解析できるようになったいま、3人という数字は、頼りなく感じるかもしれません。
けれども、共感については、数の多さよりも深さが大事だと考えています。
そして、その深さを感じ取れるのもまた、ふだんから読者の側からものを見ているか、読者の気持ちを聞いているか、その積み重ねだと思っています。
いま私は、電子書籍のKindleのセルフ出版サポートをしていますが、いつも最初にお伝えしているのは、「読者はどんな人ですか?」ということです。
原稿をチェックするときも、「読者に何を伝えたいですか?」「読者にどうなってほしいですか?」を確認し続けます。
そして、最後の仕上げの段階では、「読者はどんな言葉で、情報を探していますか?」と問いかけます。
読者のことを深く知っているか
読者の側からものを見ているか
読者の気持ちに共感しているか
それが、伝えたいことが読者に伝わるために、最も重要だと体験しているからです。
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●著書
Kindle書籍です。読者プレゼントとして「日記ブログを読まれるブログに変える3つのステップ」という特典動画レッスンつき。
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