小説家・漫画家になるための創作法【創作者がぶっちゃけ気になるコトを、編集者にぶつけてみた(2)】
今回は、3回にわたり連載している「創作者がぶっちゃけ気になるコトを、編集者にぶつけてみた」シリーズ、覆面編集者“ツッツー”へのインタビュー企画の第2弾。小説や漫画をいざ書いてみた(描いてみた)けれど、このやり方でいいのか?と不安な人も多いはず。不安なままにしていると、創作のモチベーションも下がりかねません。そこで、作家・漫画家志望者へのお勧めのやり方や、心構えについてお伝えします!(取材:とっちー&みっきー 執筆:みっきー)
まずはプロットを作ってから書いてみる
――小説家・漫画家志望の人が実際に作品を書く際、プロットやキャラクターをしっかり決めて書く人と、書きながら決めていく人がいると思います。志望者にお勧めなのはどちらでしょうか?
結局は人それぞれ、という話になりますが、初期段階のクリエイターさんには、プロット作りから始めるのがお勧めです。プロットを作ると、実際に書いた作品とのズレが検証できるから。プロットを作らないと、結果としてそうなったのか、狙ったものを書けたのかが分からない。
作家や漫画家は、ついつい才能勝負みたいに見えてしまいますが、商業作家となって継続的にやっていく以上、自分なりにある程度の法則性やポイントを押さえていかなければなりません。そのため、プロットを作って作品の企画力を磨いていった方が良いと思います。
よく、プロットを作ってもずれちゃうんですよね、とおっしゃる方がいますが、ずれてもいいと思うんですよ。プロットで自分のやりたかったことと、やれなかったことの差が生まれる理由を考えることもできます。そのうち狙ったものが書けるようになることもあれば、良い意味で狙い以上のものができる場合もある。そうしてやっていくうちに、自分なりのやり方が見えてくればいいと思います。
新人賞の作品は数年後に売れて欲しいもの、売れる作品は今売れているもの
――新人賞をとりたい作家志望者は多いと思いますが、どのような作品が新人賞をとるのでしょうか。新人賞をとれる作品と、売れる作品は違うのですか?
よく、新人賞の作品はおもしろくない、と言われることがあります。それがなぜ起こるかというと、新人賞を受賞する作品には、次に売れるだろう、売れて欲しいという、編集部側の気持ちが反映されているから。来年再来年の流行を読んだり狙ったりする場合と、押し出していきたいものの場合があります。新人賞の作品は、出版されるのが応募した時点から早くても1年前後かかるので、目の前のトレンドを狙ってもしょうがない。だから、先を見越しているのです。
これに対して売れる作品は、まさしく今読者に欲しいと思われているもの。ある意味、時代、タイミングの切り取り方が違うのです。
――翌年に流行するものでも、新人賞はおもしろくないと言われてしまうんですか?
それは、読みが外れてしまう場合があるからです。例えばファッションでも、来年は緑が流行ると思って緑系の服を作っていたのに、白が流行カラーだった、ということがありますよね。
それから、流行とは別に編集部が読者の興味を惹くだろうと考えて狙って押し出していった、尖った作品が、読者に受け入れられずに外れてしまうこともあります。
――新人賞は、「次に」売れるものしか受賞しないのでしょうか? 今売れる作品は、選ばれないのでしょうか。
いや、もちろん今売れる作品も編集部としては欲しいので、どちらの場合もあります。
新人賞でよく見られる指標は、完成度とオリジナリティ。完成度が高ければ、大賞など冠を付けやすい賞をもらう場合が多いです。オリジナリティが高くて個性的なら審査員特別賞などになる。あまりにもズバ抜け過ぎていて、主流にはなり得ないものの、編集部としてチャンレジしたい、というような場合です。
完成度の高い王道的な作品だとしても、今売れている作品と同程度であれば、編集部は興味を示さないでしょう。売れている作品と一緒に並べても、ちょっと頭一つ抜けているな、というものが選ばれる。例えばライトノベル業界ではだいぶ前に、萌え系の「妹キャラ」が人気を博した時期がありました。そういうときに、妹キャラものは市場にあふれているうえ新人賞への応募も多く、並の「妹もの」ではニーズがありません。ただし、突き抜けた「妹もの」だったらぜひ欲しいわけです。新人賞だとしても、こういうタイプはすぐにでも売れる可能性が高いですよね。
焦らずに、書きたいと思ったときに、書く
――デビュー後も書き続けられる人と、書き続けることができない人には、どのような違いがありますか?
難しい質問です。僕の感覚では、デビューした作家さんの、少なくとも半分以上の方は、3年以内に書かなくなっていると思います。それくらい、続けていくのは難しいのでしょう。
書かなくなる原因には、内的要因と外的要因があると思っています。内的なものには「飽きた」「興味が変わった」など、書くモチベーションに関わるもの。外的要因は、売れなかった、企画が通らなくなったという場合や、環境が変わって執筆に時間が割けなくなったという場合ですね。
ただここでアドバイスしたいのが、書けなくなったとしても焦らなくていい、ということです。
10代、20代のうちはがむしゃらにやる期間も必要だと思いますが、長期的に見れば、30代、40代、50代になってからデビューする人もいます。自分の表現の一つとして、小説や漫画で社会に貢献したいと思ったタイミングが来たら、そのときにまたやればいいのではないでしょうか。例えば、『図書館戦争』や『植物図鑑』を書かれた有川浩さんという人気の小説家も、もともとは10代か20代のころに書かれていて、一度書かなくなり、また30過ぎくらいで書いた作品で受賞し、デビューしました。
――書きたいと思ったときに書くためには、書かなくても食べていける状態にしておく必要がありますよね。
基本的に小説家は、書かなくても生活が成り立つように持っていかなければ苦しいでしょう。それができている方が幸せです。ただ、基本的には小説の仕事一本で生きていて、小説の仕事がないときはフリーターをされている方もいらっしゃるのが現実です。
金銭面については、漫画の方がよりシビア。漫画家は別の職業に就きながら連載を持てないので、デビュー後は一生続けるか、どこかですっぱりあきらめるかのどちらか。連載は手間暇がすごくかかり、つきっきりになるからです。今なら紙の雑誌以外にも、Webで少なめの分量を定期的に出していくという方もいらっしゃると思いますが、その場合は半分趣味のような形になるでしょう。本気でやっている方は自分の時間や力を100%投入して、連載を持っていないときは他の漫画家さんのフォローで食いつないでいると思います。
――別の職業を持ちながらでは漫画家としてやっていけないという状況も、変わっていくと良いですね。
実は今、試されている作家さんもいらっしゃるみたいですね。これまでのように作品の制作全体を自分とアシスタントで丸抱えするのではなく、企画や重要な部分だけを自分でコントロールして、他を外注するというパターンです。
加えて、Webを活用して自分を上手くプロモーションすることで、自分のペースで作品を発表しながら、コアファンを育てて行くといったやり方も可能になりました。これなら本職を必ずしも辞める必要は無いですし、デジタル化やネットの普及で今後は様々な形の作品が生まれていく可能性が高いですね。