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北村薫『遠い唇』

7篇からなる短編集。
暖かい感じのものが多かったように思う。
また暗号ミステリもたくさん出てきた。

名探偵の巫弓彦が登場する「ビスケット」
宇宙人が3つの小説を調査する「解釈」は、勘違いが炸裂するコメディ。
江戸川乱歩が自作の二銭銅貨の話を持ち出す「続・二銭銅貨」









ネタバレ込みの感想を述べますので、未読の方は注意








3つのみ感想を書きます。二銭銅貨は乱歩のを読んでから書こうかな。

「遠い唇」
キリマンジャロの雪の主人公は若くして命を落としたんだってね。まあ先輩が何か危機感があって暗号を残したとは思わないが。
コーヒーをこぼした葉書を渡されるシーンが良いな。

「解釈」
宇宙人達が小説を読んで勘違いしていく所を見ると、言葉が万能ではなく、常識とか文化、先例みたいなものに支えられていると分かる。
現実に置き換えて読むと、宇宙人はろくに知りもせずに批判してしまう人と捉えられる。作中でもあるように言葉にはとても力があって簡単に悪影響を与えられる。レビューの件はよく感じていることだ。
やはりその勘違いしていくシーンは皮肉的に描いていると思う。

「ビスケット」
巫弓彦、姫宮あゆみが帰ってきた。冬のオペラがリバイバルしたような。
しかし、時間は経ったのだ。18年も。

付記まで読むと、これは特別な知識が必要だがネットで検索することで〈犯人当ての推理小説〉として成立できると考えて書いたらしい。
冬のオペラも特別な知識?が必要であったと思うので、〈本格ミステリ〉としては特別な知識が必要かは関係ないと考えているということだろう。
「犯人は当てたくない」「常人にはないひらめきで推理する探偵」

付記に北村薫さんのスタンスのようなものが書かれていましたが、
私のスタンスも近しいと思います。当てたら残念に感じるというのは同じですが、探偵の能力はどちらでも構わないです。
そういえば円紫さんはとんでもなく鋭い探偵でしたね。何もかも知っていると思わせる名探偵は魅力的というのもまた分かる。

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