米澤穂信「下津山縁起」
アンソロジー『時の罠』所収
草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)
草木や土などにも心があるという思想
米澤穂信作品のどれかと似ているとはいえない異質な小説。
ミステリではないだろうしSFのように思えるがこんな形のSFを私は知らない。
書物の引用が時系列に沿って並べられている形式。
序盤は今を生きる私が捉えやすいようになっているが、歴史書みたいで面食らうかもしれない。研究者のインタビューが出てきてはじめて話が見えてくるだろう。
話の結末に触れますので、未読の方はお控えください。
なんというロマンSF!
万物全てに神がいるとは勿論聞いたことがあるが、それがこうも面白くなるとは。
山が意思疎通出来る上に、冗談をいったり仮説を議論したりする。学者がいるとか裁判があるとか......
古くから身近にあった山のとんでもないロマンが垣間見える。
山の捉える時間は人類に比べるととても遅く、裁判が終わるまでに人類が滅亡していたという笑い所。
裁判部分には、山が本当に裁判しているという面白さと人類が千年ほども下津山を憎んだ感情は上津山がもたらしたという驚きが詰まっていた。
「犯行は執拗で計画的、かつ隠蔽を強く目論んでおり、極めて悪質」
人類が下津山を憎むようにしたのは上津山と書かれている。
隠蔽を強く目論んでいるとは......?
人類を滅ぼして隠蔽したのも上津山だというのか!
なんという......
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