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2種類の今を大切に 七緒栞菜
未来のためにできることは、2種類の「今」を大切にすることだ。
未来の目的に対して「計画」を立てたうえでの現在、すなわち、未来からさかのぼるようにして立ち上がる「今」。そして、見えない未来に対して無目的に「準備」する現在、すなわち、未来へと向かっていく「今」。
「今」を鞄の中身に例えれば、プレゼンのために持っていくパソコンは「計画」を立てたことによる現在の表れであり、ばんそうこうやティッシュなどはいつ使用するかはわからないがとりあえず持っておく「準備」としての現在である。鞄には「計画」としての持ち物と「準備」としての持ち物のどちらも詰めておくのが安心だろう。これは、鞄の中身を人生における「今」に置き換えても同じだろう。
未来のためにできることは、自分自身が描いていきたい未来と、当たり前に先の見えない未来の両方にきちんと対峙して、今を大切に過ごすことなのである。
鳥羽和久さんは、著書『おやときどきこども』のなかで「遊びと企て」に関して言及している。「企て」は「その都度ある目的や意図をもってその実現に向かっていく行動全般のこと」で、「遊び」は「それ自体は目的を伴わない所為」であるという。そして、勉強や仕事などの生活のために行うことのほとんどが「企て」であるが、その狭間には心をほどく「遊び」の時間が必要であると述べる。そして、この二つを通して「初めて私たちは誰のためでもなく自分のために生きるという喜びを知ることになる」と述べている。
「企て」と「遊び」の関係性と「計画」と「準備」の関係性は類似している。
咲く花を思い浮かべながら目の前にある芽やつぼみを慈しみ花の世話をするかのように自分の人生の世話をすること、そして、まだ見ぬ明日につながる広がりをもった今を大切に日々を過ごすこと。このふたつを自分の意思で軽やかに行うことが、未来のためにできることであると私は思う。