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愛すべきポンコツ2号 山中りんたそ

 みなさんは、夏にエアコンがつかない車に乗ったことがありますか。私はある。というか、相棒がそうである。断わっておくが、亜寒帯気候に生活しているわけではなく、温暖湿潤気候ど真ん中の地域で私は生活している。
 
 私が相棒と出会ったのは、2年前の2月。前相棒が高齢になってきたため、就職のタイミングに乗り換えようと思い、中古車販売店へ。「どんな車をお探しですか。」「壁を走れそうな車に乗りたいんです。」「え?」「ルパンが乗ってそうなやつです…。」「ああ…。」という意味不明なやり取りで店員さんを困らせてしまったが、おそらく初めてであろうリクエストに真摯に対応してくれた店員さんが、相棒を紹介してくれた。年式や値段の割に状態がよく、ルパン三世と同じ車に乗れることに歓喜した私はナンバーまでルパン三世と同じにして購入した。トコトコ鳴るエンジン音。真っ赤な内装。丸い顔。最低限の小さい体。目にいれても痛くないとはこのことで、自分の車が世界で一番かわいいと思ってた。ところが、お付き合いが始まって3ヶ月頃に異変が起こる。

 冷気が出ない。

 これは由々しき問題である。私は通勤で片道45分間、相棒と過ごしている。今の症状のままだと、来たる夏はサウナ状態で過ごさなくてはならない。そこで販売店で調べてもらったのだが、どうやらコンプレッサーに異常があるようで部品交換が必要とのこと。そのお値段50万円ちょっと。うーんお高い。悩みに悩んだが、”エアコンの効いている車にルパン三世は乗らない”ということに気が付き、修理しないことを決意した。「なんだよそんな汚れくらい まるごと抱きしめるよ」と歌うBUMPのフジくんに自身を重ね納得する。

 かくして、付き合って3ヶ月危機を乗り越えた私たちは、今年も灼熱の中移動する。

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