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店員さんと私 文箱ゆづき

この前、行ったカフェでお会計をして店を出た後、店員さんが追いかけてきた。
「あの、ハンカチ、違いますか?」
差し出されたものは私のハンカチ。
そっか、忘れてきちゃったんだ、と思いつつ、お礼を言って受け取った。
すぐに気づいて持ってきてくれた店員さんがありがたかった。


車の座席に座りながら、こういうのは久しぶりだなと、ふと思った。


私はおっちょこちょいでよく忘れ物をしそうになる。
だから、最近は、忘れ物ないよね?と席を立つ前に、自分の周りを確認するようにしていた。
けれど、私自身考えごとをしているときが多いので、気を抜くと、確認を忘れてしまう。
そのときも、家に早く帰って……などと考えていたからだと思う。

また、最近は、「あの、これ落としましたよ」と言う側の方が多かった。
相手の忘れ物や落とし物に自分が気づくよりも、自分の忘れ物に気づいてもらえるのは久しぶりだった。



だからだろうか。
私はただの客なのに、その私に忘れ物を届けてくれるんだという奇妙な感覚だった。いや、もちろん、私が同じ立場だったら、届けようとする。ここに忘れられてもというのもある。
たぶん、店員と客というだけの他者に、追いかけてまで親切を差し出してくれたことで、店員さんを一人の人間として認識したのだと思う。
忘れ物を届けてくれた親切な女性店員が輪郭をもって現れた瞬間だった。自分は、店員さんというラベルを通して、その人を見てたんだなと思った。それはそうなのだが。


まあ、私としては、思いもよらないところからの親切だったので、今回の記事に書いてみた次第だ。



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