「あなたの燃える左手で」とおやつ屋Fikaのクッキー
2024年6月24日雨
仕事で子どもたちと歩いて郊外学習へ行く。 男の子が歌うようにふわっとわたしの左手を握り、しばらくそのまま歩く。ほえ、と手をつないでいることに気づき可愛く照れ笑いし、手を離した。
帰り道は女の子がわたしの左手を強く握ってきた。ぎゅっとしてはゆるめ、を繰り返しながら歩いた。
わたしは、わたしの左手はふたりの手の感触をいつか思い出すことがあるだろうか。
冒頭、一体これは誰の声なのか。
まさに今毎日ニュースで耳にする国に着地する。自爆を望んでるわたしが爆弾アレルギーなんて、と自嘲する。
腹の蕁麻疹は地図を描き始める。
なかなかに難解で重苦しい設定で、と不安になるも、アサトの身体の変化を通して、細やかでときに滑稽な描写と共に進んでいく物語にどんどん惹き込まれた。登場人物それぞれに訛りのある会話も面白い。
ハンナは言う。
「いいなあ、島国。大きな列島、どこまで行っても自分の領土」
「自分だけの山、自分だけの河。陸から他の国は見えるん?」
またアサトの手の手術をした医師ゾルダンも言う。
「大陸よりもはるかに矮小で、しかし、島国というには長大な、日本列島。小さな領土のふりをして、西ヨーロッパのほとんどの国よりも大きく人口も多い。ぼんやりとした領海に囲まれて国境を知らず、似た者だけで排他的に暮らしながらも、自分たちは心優しい人種と思い込んでいる無知で幼稚な国民、、、。」
(このゾルダン視点で語られる章が、ゾルダンの性格と共に効いている。ゾルダンめ〜、名前がピッタリ)
島国であることが人格にどれほどどんな影響を与えているかなんて考えたこともなかったけれど、もしかすると、あれもこれもだからか、と合点がいってしまう。
この左手はほんとうはハンナのものではないだろうか、ハンナのものであってほしい、とどこかで思いながら読んでいたため、途中の章で混乱する。
突然理由もなく自分の一部が分断され違うものとなる。まるで自分の一部だったかのようなものがなくなる、いなくなる。拒否する、受け入れる、溶け合う。
この平凡な日々においても、ある。
左手の記憶を辿る。
思いのほか、わたしの左手は、いろんなことを覚えていた。あのふたりの子どもたちと手をつないだときの感触を覚えていたい。
「イミモナク、キラレテ。カワイソウナ、ウデ、イミモナクノコサレテ。フタツハ、ツナガッテイタモノナノニ、、、」
冒頭の情景が鮮やかに立ち上がり恐ろしくなった。
おやつ屋Fika さんのクッキー
手作りの可愛い小屋で無人販売をしていた。