森、道、市場 2023
愛知・蒲郡で開催された『森、道、市場』へ今年も参加してきました。2019、2022と参加してきたので今年で3回目。2日目土曜日、3日目日曜日の2日間の参加。
5.27(土)ライブアクト振り返り
まずは見たライブを振り返ってみる。
①羊文学
スリーピースバンド・羊文学をこのフェスのメインステージであるGRASS STAGEにて。羊文学のライブを見るのは初めて。スリーピースとは思えない音の厚みやうねりと、そこからは想像もつかないほど爽やかな聴了感。音源だとシューゲイザーっぽく歪んでいる音像が、この日はサイダーが弾けるようなシュワシュワしたサウンドに聞こえたのは、このフェスのロケーションがそうさせたのではなかろうか。青空の元で聞く『永遠のブルー』がたまらなかった。
②valknee
花澤香菜のお友達でありギャルラッパーのvalkneeのステージ。リリックに込められた怒りや悲しみといった感情を、過剰なほど音が詰め込まれたトラックがより増幅させるようだった。ギャル特有の気だるげな喋り方でそのままラップしてるみたいな感じで最高。Base Ball Bear『日比谷ノンフィクションⅨ』での客演でしか見たことがなかったけど、客演ではなく自分自身のステージのvalkneeもめちゃイカしてた。
③Chilli Beans
浜辺の砂浜に特設されたSAND STAGEが超満員になったChilli Beans。昨年リリースのアルバムが凄く良かったのでやっと見ることが出来て嬉しかった。音源を聞いて抱いていたイメージよりもより骨太なサウンドを鳴らしていて、やっぱりレッチリに影響受けてるんだな〜と。名前もそこからの引用だし。音源で感じていた可愛らしさみたいなものも、ライブを通してより感じることが出来た。次はメインステージに立つチリビを見たい。そしてまた森道でシェキララしたいぜ。
④betcover!!
オルタナティヴ・ロックの系譜では今最も注目のミュージシャンの一組、betcover!!。メロウかつオルタナティヴなサウンドはヒリヒリとしたシリアスなムードに満ち満ちていて、今日イチ緊張感と鮮烈なインパクトを残すアクトだった。ヤナセジロウの艶めき立つような色気の溢れるボーカルが、16時の強い日差しの中なのに真夜中に錯覚してしまいそうになる。シニカルな世界線も音像と相まって真に迫ってくる。強烈な時間だった。
⑤THE BAWDIES
遊園地のプール沿いに立つ遊園地STAGEでTHE BAWDIES。60's的なオールド感溢れるロックンロールやカントリーとバンドの人懐っこいキャラクターが底抜けに楽しい時間を生み出す。エンタメチックなステージも遊園地という森道ならではの舞台にバッチリ映えていた。『魔女の宅急便』風のミュージカルのくだり最高だったな〜。
⑥フジファブリック
この日のトリはフジファブリック。彼らのライブを見るのは2019年のROCK IN JAPAN FESTIVAL以来。高校時代に狂ったように『夜明けのBEAT』をリピートしていた僕にとって、彼らの音楽は青春のを彩ったピースのひとつ。そんなフジファブリックのライブをバチバチの地元で見ることができたのがもうめちゃくちゃ嬉しかった。ライブがスタートする前、リハーサルで『夜明けのBEAT』をやってくれてもうそれだけで感無量だった。本編でも『徒然モノクローム』や『星降る夜になったら』みたいな大好きな曲をたくさんやってくれて嬉しかった。なにより『若者のすべて』ですよ。日本の夏はもはやこの曲なしじゃ迎えられないし超えられない。そんな曲をこの夏に差し掛かろうというタイミングで聞けたことでこの夏はもう完璧。このGRASS STAGEはステージの裏手に観覧車が立っているんだけど、夜空の下で回り続ける観覧車は『若者のすべて』のCDジャケットの再現のようでグッと来ない訳がなかった。そして最後の『破顔』のストレートなサウンドとメッセージにめちゃくちゃ感情揺さぶられた。このフェスに来てくれて本当にありがとう。
5.28(日)ライブアクト振り返り
①トリプルファイヤー
4人組ロックバンド、トリプルファイヤー。ニューウェーブから影響を受けていると思われるギタードラムベースのソリッドでカッコ良いアンサンブルを朝から堪能。いわゆる"陰キャ"的マインドを存分に発揮した残念さの漂う歌詞は、演奏のソリッドさとの対比が効いて胸に迫ってくる。『次やったら殴る』でフロアが盛り上がっている感じ、最高だった。
②リーガルリリー
観覧車をバックに波の音が聞こえる、森道の中でも最高のロケーションなSAND STAGEで見たリーガルリリー。オルタナティヴで美しいポップ・ロックと儚げなたかはしほのかの歌声、愛しくなってしまうよ。やっぱりリッケンバッカーに心奪われる。高校生の時に作った曲なんだってさ。マジかよ。グランジやオルタナやシューゲイズみたいな彼女達のルーツはあるんだろうけど、そういう既存の音楽性では形容し切れない彼女達ならではのオリジナリティが確立されていると感じたステージだった。
③ZAZEN BOYS
エフェクティヴなリードギターと自由自在のリズム隊が生み出す異常空間Z。そんな中でも向井秀徳のギターだけはやっぱりあの向井秀徳だけが出せるじゃないかと思ってしまうような特徴的なジャギジャギとした音で、向井秀徳のバンドにはこの音が不可欠なのだと実感。シュールでナンセンスな歌詞に思わず笑ってしまいそうになるけど、音の説得力が段違いすぎて結局終わる頃には超かっけぇになるんだよな。普段あんまりまともなMCをしない向井が、このフェスの主催者をイジってたのも森道ならではの場面だった。
④スチャダラパー
ヒップホップを日本のお茶の間に初めて届けた、現在の音楽シーンにとってあまりにも重要な存在であるスチャダラパー。まさかライブが見れるとは。「MATSURI STUDIOから来てません!スチャダラパーです!」とZAZENを踏まえたMCで観客を湧かせる姿はヒップホップでいうところのサンプリング的でもあるなぁと思いつつ。俺たちの心のベストテン第1位こと『今夜はブギー・バック』はリミックスバージョン。この曲を生で聞ける日が来るとは!次は小沢健二のnice vocalバージョンを聞きたい。他にもポンキッキーズの曲で有名な『GET UP AND DANCE』も聞けて嬉しかったな〜。世間的にはポンキッキなんだろうけど、昔実家にあった家でできるダンレボのソフトにこの曲が入っていた記憶が蘇った。そして『サマージャム'95』で夏をはじめて大団円。
⑤indigo la End
この日の個人的メイン、indigo。ライブ見るのは2020年の秋以来。ガッツリステージ前を陣取って見ることが出来た。ここまで接近してライブ見るのは初めてかも。全体的に割と尖った楽曲を並べるセットリストで、耳の肥えた森道の民をバッチリ刺しに来る体勢だった。とりわけ僕が1番聞き倒したindigoのアルバム『藍色ミュージック』の最終楽曲『インディゴラブストーリー』でライブを〆てくれたのが嬉しかった。このアルバムや『Crying End Roll』を聞きながら、この会場の傍をよく車で通っていた大学時代を思い出した。昨夜の『若者のすべて』からのindigo『夏夜のマジック』という、私的にもロックシーン的にも近年の夏ソングと言えばコレ!な楽曲を野外のこのロケーションで、しかも立て続けに見ることが出来たので、私のこの夏は最高になることが確定した。
⑥cero
私的にも、このフェス的にも大トリを飾るのはcero。シティポップ、ブラックミュージックへの接近、といったceroの音楽性を評価する際に使われてきた言葉ではどうしたって足りない濃密な音楽体験であった。都市と自然、現実と神秘、混沌と調和。相反する要素が頭を行き交うステージ。ドリーミーでありながら、カオティックであり、と思えば純潔さすら感じる瞬間もある。ニューアルバム『 e o』からの楽曲を軸に『My Lost City』や『POLY LIFE MULTI SOUL』からも披露。フェスティバルのトリに相応しい神々へ捧げる儀式のような趣すら感じる瞬間が多々あった。サウンドもアフロビート、ジャズ、そしてシティポップとダンサブルなジャンルを軸としながらも、ただ躍らせるでは無い見るもの聞くものを釘付けにするようなライブ。最後の最後に凄いものを見た。
立ち寄ったマーケット
ここからは食べたご飯とマーケットについて記していく。
①ぞうめし屋 ぞーナッツ
② Quiet Village ハンバーガー
③イチトサンブンノイチ 海老天すだちうどん
④スパイスカリー大陸 あいがけカレーとラッシー
⑤fons RoooLou × fons / “HUNT FOR BUGER” TEE 森道市場2023
⑥タイペイシャオツー 魯肉飯
⑦源次郎四郎商店 漬け鮪丼
⑧羊羊 YOYO AN FACTORY 黒糖ラムコーラとどら焼き
⑨ラーメンやんぐ トムヤムトマト麺
あと写真撮り忘れたけど豆乳チャイと黒糖サーターアンダギーも食べた。
参加しての所感とまとめ
ここからは参加しての所感、まとめ。
森、道、市場らしいブッキングは今年も健在。例えばメインステージ最終日のラインナップだけ見ても、TENDER、ZAZEN BOYS、スチャダラパー、indigo la End、ceroってメインステージがこんな並びのフェス見たことない。ジャンルレスでありながら、ただ流行や人気を追うラインナップではなく、面白い音楽を届けようという気概をヒシヒシと感じる並び。どんな音楽も受け入れる器の広さと、音楽に対する鋭い視線と愛情がなければ成し得ないラインナップだと思う。
そしてこのフェスティバルのもうひとつの主役、マーケットについて。特にご飯は本当に何食っても美味い。もはやフェス飯なんて概念では無い。むしろこのフェスにおける飯をフェス飯と形容するのは他のフェスが可哀想。ご飯も雑貨もアパレルも、普段からお店をされている方たちが出店してるので、いわゆる露店とはクオリティが全く違うし、そもそもそラインナップも全然違う。フェスは愚か普段でも食べれない面白い食べ物がいっぱいある。これを目当てに参加する価値が十二分にある。愛知県の某うま○もん祭とか行くならこっち行く方が全然良いと思う。
マーケットや音楽ライブ以外にも、トークイベントにzine制作、お笑いイベント、サウナやら...挙げだしたらキリがないほどコンテンツに溢れてる。遊園地のアトラクションも乗り放題。どこで写真撮ってもいい画が撮れるのも最高。場所そのものがコンテンツ。なんなら潮風やらカレーやらコーヒーやらソーセージやら、会場歩いてるだけで色んな匂いを感じることが出来てもうそれだけで楽しい。広大な土地に所狭しとコンテンツが並び立っているような状態なので、とても2日間じゃ到りきれないし、なんなら3日通してもライブ何組も見てたら無理だと思う。じっくりマーケット回ってたらそれだけで各エリアで1日終わると思うし、それでも楽しそう。
このフェスの最大の難点は導線。市場という特性に加えて、遊園地という既存の施設を使うこともあって導線はしっちゃかめっちゃか。埼玉の某フェスの導線がよく悪く言われているけど、このフェスよりはマシじゃねぇかなと思う。マーケットに並ぶ人、立ち止まる人もいるから根本的に導線が導線として成立していないんだよね。けどやっぱそのわちゃわちゃ感も含めのこのフェスだと思う。市場をコンセプトに含むってことはそれも必然なわけで。音楽だけを楽しむための人、統制が取れない場が楽しめない人にこのフェスは向かないと思う。なら他所行ってくださいって感じ。
今年からマスクや声出しに関するルールが撤廃された。観測範囲では着用者は1割にも満たなかった気がする。私はひよってたので一応着けて参加。着けてない人は定められたルールに則って着けない選択をしているだけなので悪く言うつもりは全くない。むしろこの景色が通常だよねぇと思ってる。来年は自分も着けずに参加出来るかな。
フェスにおける撮影問題って割と昨今のテーマなんだけど、このフェスではタイムテーブルに各出演者の撮影の可否を明示していてめちゃくちゃ画期的だった。私もOKの出演者の時はバッチリ撮影してきた。逆にNGな出演者のとき、他に撮影しているような人もいなかったので、この施策は大成功だったのではないだろうか。ぜひ他のフェスも追従して欲しい。
個人的に気になったのは、GRASS STAGEのライブエリアについて。HP掲載のマップを見ると、大体PA卓が設置されている位の場所までがスタンディングゾーンとされていて、それより後ろは特になんの指定も無かった。だからみんな大体この辺りにシート引いたり寝っ転がったりしてライブを見ていた。これまでの2年間でそういう瞬間に立ち会ったり、なんなら自分もそうしていた。今日もそんな感じかなぁと思ってたらスタッフの人が「ここスタンディングエリアなんで!」って寝たり座ったりしてるお客さんを立たせまくっていてえーそんな感じ?って。改めてマップを見てもやっぱりPA卓あたりまでしかスタンディングエリアに指定されてないんだよな。柵とかも基本設置されないフェスだから、上述の導線も含めてこの辺りは極めて曖昧に進んでいくのだけど、そんなにガッチリ絞めてくる感じならエリア分けもうちょっとハッキリさせた方がいいのにねとは思った。少なくともHPのマップとは完全に矛盾する対応だったと思う。
あとこれは毎回思うんだけど海側エリアのゴミステーションをちゃんとエリア内に設置して欲しい。遊園地側はラグーナの既存のゴミ箱を活かしてるんだけど、海側はもう出入口の1箇所しかなくて致命的。それでもゴミで溢れ返ったりする事は全く無いから森道のお客さんはしっかりしてるんだと思う。他のフェスならめちゃめちゃなことになりそう。
そんなことを思ったりしたけど、この2日間でやっぱり『森、道、市場』大好きだなぁって思った。オルタナティヴかつDIY的なノリでありながら、フェスティバルを盛り上げようとする真摯な姿勢も至る場面で感じる。他のフェスでは絶対に感じ得ること、体験し得ることの出来ない唯一無二のフェスティバル。このフェスが地元にあることは本当に私の誇り。フジロックでも、ロッキンでも、サマソニでもこのフェスで感じる何かは感じれない。
とりあえず愛知県民や近隣県のひとたちは1mmでも気になったなら全員来いって思ってる。音楽の好き嫌いは二の次三の次でいいから、美味しいご飯を最高なロケーションで食べるためにこのフェスのチケット抑えてみたら良いと思う。美味い飯嫌いな人なんてこの世界にいないんだから。あと海と遊園地でキャッキャしてたらもうそれだけでめちゃくちゃハッピーだし、それに飽きたら適当なステージ見に行ったりすれば良い。それがこのフェスの1番楽しい遊び方だと思います。私も来年も参加したいな。その時は乾杯しましょう~。