春になるとに会いたくなる「あの子」の話
もう今年も3月ですね。
この時期になると会いたくなる「あの子」とのお話をしたいと思います。
「あの子」との出会ったのは今から10年以上前です。
その頃は、こんな書き出しで話をする未来がくるなんて想像もできない高校二年生でした。
「あの子」は私と同じクラスで、一つ前の席に座っていました。
私たちが初めて話したのは「プリズム(ウニの幼生)」についてだったと思います。
「受精後間もないウニの幼生は透明のおにぎり型をしているのに、なんで大人になると黒くてトゲトゲになっちゃうんだろうね」
生物の授業後、私の独り言を「あの子」はじっと聞いた後に
「綺麗よな、生き物って」
と部活の話をし始めました。
生物部でプラナリアを飼っているということ、
プラナリアは切ったところから再生をしていくということ、
そして、今度そのプラナリアを見せてくれると約束してくれました。
それからというもの「あの子」色々な話をしてくれました。
私はウェブコラム読むように彼女の話を聞いていました。
マキシムザホルモンのライブTシャツを勉強が身に入るということ
遠藤周作は絶対読んでおかないとまともな大人に慣れないということ
将来は新聞記者になりたいから社会学部にいきたいということ
放課後に遊びにいくとか、夜な夜な電話をするとか、いわゆる友達らしいことをした記憶はありません。
それでも、私にとって「あの子」は特別な存在でした。
自分の好きと嫌いをたくさん持っていたあの子は、周りにいる誰よりも強くかっこよく見えていました。
彼女と最後に連絡を取ったのは、お互いの大学の合格発表でした。
「受かったよ」
「おめでとう。私も」
携帯電話のアドレスがLINEやTwitterのIDに変わる頃には、
「あの子」に話しかける繋がりを失ってしまいました。
同級生に聞いても誰も「あの子」の今を知りませんでした。
昨年のこの時期、最後の会話から10年が経ちました。
私は携帯に残っていたezwebで締められるアドレスにメールを送っていみました。
送信ボタンを押した1分後に宛先不明のエラーメールが返ってきました。
「あの子」だったアドレスは、どうやらインターネットの中の誰も住んでいない空き地になってしまったようです。
この先、「あの子」に会えるかはわかりません。
もし会えたとして、昔のように絶妙な関係が持てるかはわかりません。
会えても会えなくても
お互い変わっていてもいなくても
これからも夜生暖かい風が吹き始めるこの頃「あの子」を思い出した時にはもう使われなくなったアドレスに近況報告をしにいくのだと思います。
元気にしていますか、と。