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早くも今年イチ面白い本かも『ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考』

ハロー、マオです。

突然ですが、
私は仏教を宗教としてでなく
ひとつの哲学体系としてめっちゃ推してます。

お釈迦様は言いました。
「私の言ってることもちゃんと疑いなさい」
こんな教祖、他にいる〜???
宗教としては崩壊してるでしょ。笑
しかし、
論理的な思考体系としては完璧に成立しているのが仏教です。

仏教に関する本もアタリが多い!!

(まだ2月ですが)2024年読んだ本でダントツ面白かった
ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考』という本を紹介します。




『さとり』についてサクッと解説


仏教の存在意義とは?

本書の一部の紹介、ここでは左上の部分をみてください。

人間は喜びより苦痛に対する方が敏感なので、
苦しみを取り除くことを重視するのが仏教なんだそうです。

第一ステップとして
あらゆるものの中に「苦」が存在することを認めましょう
というのが土台のスタンスです。
これを一切皆苦といいます。

例えば、
大好きな人と結婚しても生活のすれ違いで離婚してしまう可能性もあります。
大事な我が子が交通事故に遭って死別するかも。
憧れの大企業にお勤めしても、汚い陰謀で左遷させられるかも。
国民的大スターになっても末期がんになるかも。

ネガティブ妄想なようですが、
どんなにより良い選択をしたと自負していても
なんらかの因果で
「苦」に転じちゃう可能性があるのは否定できないよね。
人間万事塞翁が馬ってやつです。

それなら苦しみの種を結実されない心の使い方をしよう、

それこそが『さとり』だ!

『さとり』とは?

『さとり』は
理屈や言葉での説明ではなく、
あらゆるすべてのものを知覚した時に
「これは『』だ」と
直感的なレベルで納得できる状態のこと。

『空』とは?

「そら」ではなく、「くう」です。
『色即是空』って聞いたことありませんか。

『空』は
全てのものは何にでもなる可能性を備えている
という概念。
これは「そう思うとポジティブに生きられます」みたいな
マインドセットの話ではなく
ガチで「どんなものにでもなり得る」ことを
論理的に丁寧に説明してくれてるのが仏教です。

この『空』について、理屈を超え理解した状態が『さとり』です。

論理的なのに理屈を超えるとは?
『空』の詳しい説明として、
般若心経のゆるふわ解説漫画を貼っておきますね。

ちなみに本書曰く
『般若』とは
『通常の知性を超越した知性』=『さとり』という意味の
『プラジュニャー』というサンスクリット語に
漢字で音を当てたものなんだそうです。
勉強になる〜!


本書の要約


  • 『私』は他者(他人、世界、社会)がないと成り立たない

  • 全てのものはネットワークで繋がっているので自分と自分以外(=他者)は同義である

  • つまり、全体のことを自分ゴトと捉えて行動する方が自分の利益になる


『君たちはどう生きるか』
主人公のコペルくんが発見した
「人間分子の関係、網目の法則」は、
まさに具体としてこの仏教概念を説明してくれていましたね。

仏教に論理的破綻がなく、非常に科学的な考え方だなと思わせてくれます。

人類補完計画『曼荼羅』

この見えないネットワークをビジュアライズしたものが曼荼羅なんだそうです。

成田山 新勝寺の曼荼羅


本書では密教の深淵のような複雑な曼荼羅を

一つひとつ自立しつつも
一匹狼ではなく
相互補完的ネットワークで繋がっている状態

と、とても理解しやすく説明してくれて
その世界観を掴みやすかったです。

私たちは他者が存在しないと成り立たないので
自分の利益のためには
自分以外のことも考えなければならない

『ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考』P63

『情けは人のためならず』がロジックで解説されています。
分かりやすい!

すべてのものは関係性のネットワークで成り立っているうえ
かつ、流動的で
状況によって関係も意味も変わってくる
のだから
「絶対的正しいひとつの真理がある」として
そこに向かって闘争を繰り返して高みを目指す
実在論、弁証法的な思考法から脱却しようというのが
本書の重要な提案です。

個人的にヘーゲルの弁証法は
アイデア出しの整理をするとき、独りブレストに
非常に便利でした。

提案Aに対して対立案Bを出し、
双方の意見のバトルさせ、
ABのいいとこ取りで昇華させた新しいC案ことアウフヘーベン(止揚)

弁証法は隙のない良い方法に感じますが、
実はこの、意見闘争には終わりがありません
バトルのすえ、出来上がったアウフヘーベンCと
その対立案Dでまた闘争が始まるからです。
闘争に疲れ、止揚ではなく妥協で終わることもしばしば。

それよりは、
「A案がいい状況も、B案がいい状況もあるよね」という
曼荼羅的な世界観を模索する方が
新しいアプローチになり得るよと提案してくれているのが本書です。


本書で初めて知った仏教衝撃の事実


葬式仏教っていうくらい
我々日本人には身近な仏教ですが
謎なことっていっぱいありますよね。

素朴だけど重大な仏教の疑問を、
本書『ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考』が
解決してくれたことについてご紹介いたします。

・仏教って合理的・科学的な哲学なのに、なんで輪廻転生があるの?


これずーっと私も疑問でした。
ロジック完璧なのに、急に魔法っぽい概念だな!?
と思いませんか。

(輪廻転生が)存在する、しないの確率は50:50だから
存在する前提で生きた方がトータル有利だし
仮に存在しなかったとしても
周りを助けていい人として生きる方が
豊かな人生になるだろう

『ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考』P39

めっっっっっちゃ納得した!!!!!

そういえば仏教は
さとるためなら
『方便』というウソを使うことを
いとわない最強の哲学体系でした。

ex)
火事の家屋からパニックにならないように子供達を救出するため
「おもちゃ買ってきたからうちから出ておいで」と屋外から声をかける。
子供達は火事に怯えて右往左往することなく一目散に家から飛び出てくる。
ウソ(方便)はついてるけど、人命救助の目的は達成される。


・無意識ってフロイトが発見したと思ってた

再びこの画像の下の図を見てください。

『八識説』に注目

ピラミッドの上二つが
五感(見る、聞こえる、匂う、味、触感)で感じる五識と、
脳や心で感じたり考えたりする六識が
自分で知覚している意識にのぼる部分です。

その下、無意識!!!!

私はずっとフロイトが発見したものとばかり思ってました

だから、『源氏物語』の六条御息所って女性が
自分では意図せず生き霊を飛ばして恋敵を呪い殺すシーンでは

(まだフロイトが無意識って概念を発見する前に
『無意識』でやっちゃう行動を文学に昇華してて
紫式部マジ才女〜!)

などとボケた感想を持っていたのですが、
仏教には無意識って概念あったのですね……!

そういえば最近読んだ本も、このような前書きから始まりました。

世界各地で伝承されてきた神話には、非常によく似た展開の物語があちこち存在します。
神話には古今東西の人類の共通した無意識や記憶が現れていると考える研究者もいます。
分析心理学者のユングがその代表です。

『ビジュアル版 一冊でつかむ世界の神話』より

このようなことを体系的にまとめてくれてる仏教、ほんとすごい。

他にも本書では
上座部仏教と大乗仏教の仏陀に対する見解の違いなど
すごくスッキリ整理してくれています。
大乗仏教作のファンタジーキャラ
弥勒菩薩様や薬師如来様のルーツを知れて感激でした。
ぜひ本書を読んで楽しんで勉強してください。

さらに本書は、
・現代を仏教的に読み解く方法
・西洋哲学やキリスト教、他のインドの宗教との比較
・インド→中国→日本に伝わった仏教の変性

などなど、充実して盛りだくさんの内容です。

宗教としてではなく
現代を生きる上でのやさしい哲学書として
本書と仏教をおすすめします。

もう宗教の仏教と分けて仏学とか、
学問形態として呼称した方が
宗教アレルギーの多い日本人には受け入れられやすいんじゃないかなあ。

ここまで読んでくださりありがとうござました。
またね!


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