終わりの幸福、あるいは祝福
未曽有の疫病が世を席巻してしばらく経つ。町のひなびたステージでまばらな客を前に日がな一日笑顔を振りまいていたはずの垢ぬけないそいつは、瞬く間にスターダムを駆け上がっていった。今や武道館も満員御礼の超売れっ子。それどころか摩天楼のごとき高級マンションのペントハウスで悠々自適かつ傍若無人な富豪生活、といったところである。おかげでひとびとは生活の改変を余儀なくされ、もとよりたいして生きやすくもない世の中を、さらに息を詰めてやり過ごさなければならなくなった。終わりは見えない。もはや