140字小説集 明朝体の綺麗な足跡(春のまねきねこ座)
季節ごとの課題の文字を使った140字コンテスト「春の星々」の参加記録です。
春の課題の文字は「明」。4月30日まで開催しています。
no.1
「明朝体」
先日、印刷博物館で活版印刷体験に参加してきました。活版所というものを初めて知ったのは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」です。活字を拾うジョバンニが目が疲れたような仕草をするので、すごく細かい作業なんだろうな、と子供心に思っていました。実際に活字を目にすると、硬い金属の工業的な美しさ。自分が誤って傷つけてしまわないかとなんだか緊張します。不器用なもので、拾った活字がこぼれ落ちそうでひやひや。印刷したときにずれないようにぎゅっと組版をネジで固めるのですが、こんなに固めるの、なんだかみんながいたずらっこで、動かないように押さえつけてるみたいだなあ、と思ったのでした。
no.2
「また明日」
お題が「明」なので、「また明日」は書きたいなあと思いました。近しい人との死別や、職場や学校で出会った人たちとの離別を重ねて「さようなら」の重さが若い頃と変わったように思います。もう会えない、ということは結構あるんだなあと。また会えるのは奇跡のようだね、そう思いながら笑っていたいものです。「また明日会おうね」。
no.3
「透明なハガキ」
この前の日曜日、「シロクマ文芸部」のお題で「透明な手紙の香り」から始まる小説を書きました。香りこそ、透明な手紙だなと思う。まだ他の発想はなかったか、そもそも書いた話そのものをもっと練ることができなかったのか。ちょっと引きずっています。普段書くのとは違うファンタジー風のものを書いてみました。濃くはっきりしたやりとりができなくても、どこかにいる自分と似た人を感じるだけで、すこし安心するときがあります。淡いやり取りだからこそ、というか。
みなさんの応募作はnoteで読むことができます。
※私は第二期で賞をいただいているため、選考からは外れており「第2期星々大賞受賞者」としてご掲載いただいています。
たくさんの素敵な140字小説が星のように輝きますように。