140字小説集 秋の文字、深し
今月は星々140字コンテスト「秋の星々」に参加(応募ではありません)しています。秋の文字は「深」。140字の中に必ず「深」の文字を入れ込みます。
no.01「深爪」
小さい頃爪を噛む癖があり、ものすごく小さな爪の子供でした。「爪を噛むことは自傷行為の一種」という説を聞いたのは大人になってからです。根拠については分かりません。とはいえ、確かにストレスがかかったり、自分はダメだな、と落ち込みすぎたりしていた時に噛んでいたように思います。
行為の深層心理は置いといて、「深爪」とりわけ「噛んだ深爪」というのは結構人に見咎められます。女性の方が聡い印象です。(私が女性なので、異性には指摘しにくい、ということもあるかもしれません)。綺麗な爪の女性に爪を注意されると凹みます。今は噛む癖もなおり、子供の頃ほど深爪ではありません。大人になってから見ると、やっぱり爪が異常に短い子供はちょっと心配になります。「なおしなさい」とか「短い爪はだめ」とか言われて泣きそうになった経験がある身としては、「爪は伸びるよ」っていうのが救いだなと思います。気まずい思いをしたり、噛む癖がもう一生治らないような気がしたりしても大丈夫です。爪はまた伸びる。いつでも治せる。うまく付き合えるように、そのうちなるから。
No.02「さようなら」
恥ずかしがり屋、というと聞こえが良いけれど、他人に対して臆病なところがあります。誰かに会いに行くたびに、「迷惑じゃないかな」と膝が震えるくらいです。「またね」という挨拶をなかなか言えません。「相手の方が嫌だったらどうしよう」と思ってしまうし、そうでなくても「また会いにこれるだろうか」と怖くなったりもしてしまう。
だから「またね」と挨拶されるとものすごく動揺してしまいます。私もそう言うべきだった、ごめんなさい。カッコつけるんじゃなかった。そういう気持ちでいっぱいになる。
帰り道、「またね」が暖かくて嬉しくて、お土産みたいに大事に抱えて帰る自分なのに。自分も、それを相手に渡せたらいいと思います。
さて、少しお知らせです。第2期星々大賞を頂いたと言うことで、「星々の新人」として「星々vol.4」に私の140字小説が掲載されます。
「星々の新人」として、第3期星々大賞ののび。(サトウのび)さんの作品も掲載されます。つまり、現在の星々のコンテストで年間大賞をいただくと、「星々の新人」として掲載の機会がいただける、ということであります。
秋のコンテスト締切まであと1日。我こそは、と言う方はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。