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ショートショート 18時

 18時を知るのに時計はいらない目が耳が皮膚が一斉にそのタイミングを感じ取るだってお魚コーナーお肉コーナーお惣菜コーナーそれにカットフルーツ売り場におなじみの制服を来たスーパーの店員さんがロールに巻かれた台紙の赤いシールを手にほらやってきてくるり台紙からシールをはがせばみなギラリと目が光ってお目当てのものを見逃さないさっきまで買うかどうかを迷っていた2個ひとパックのフレッシュハムを放り出し台の上にずらりと並んだ唐揚げやら餃子やら春巻きやらに一目散だってちょっと目をひくし見たら見たらでお腹がぐうとなるし余分に買っても明日のお弁当のおかずになるしそれに今日は牛肉コロッケがめずらしくあってたまに出るあれが私の大好物なのだいかにも待ってましたといわんばかりのお母さんがカゴに何個も唐揚げを持っていく大きいのはお譲りしますねと遠慮がちにかつエレガントに私は6個入り半額のコロッケをつまみとるうへへへどうして食ってくれよう今夜と明日の朝とお昼のお弁当だぞほくそ笑む私の目に野菜サラダがうつるコロッケだけじゃどうにも栄養のバランスが悪いあとそうだせっかくだから甘いものもちょっと欲しいコロッケと野菜サラダとカットスイカをカゴにいれてレジにほくほくとじゃがいも顔でむかえばチンとお会計全部で950円也夕食に950円っておかしいなこれってお得だったんだっけ?

ショートショート No.455

課題「文体の舵をとれ」第2章②

「恐れを知らぬ波乗りねこ」
for Steering the Craft

introduction
エッセイ ガラスの浮き球

1−①ー1 名古屋の化け猫

1−①ー2 この場所

2−② 18時