医者

生と死の考え方が変わった瞬間

わたしは医療ドラマが好きだ。
そこで行われている医療が現実的なものかどうかはわからないが
あのスピード感や緊迫感がほかのジャンルのドラマとは違い、両方たのしめるのが特によい。

これまでたくさんの医療ドラマを見てきたが、さいきんは「命」を扱う作品に対する考え方、感じ方が変わってきたのを感じている。


現在放送されている「コード・ブルー」
このドラマはドクターヘリに乗るフライトドクターたちの苦悩や葛藤を描いた作品で、わたしもとても好きな作品だ。

言うまでもないが、ドクターヘリは通常の患者が乗るものではない。
すぐに病院へ搬送しなければ命の危険がある患者が優先的に乗る。

それはつまり、いまこの瞬間に生と死のはざまにいる者が運ばれる乗り物ということになるわけだ。


ではここで質問だが、常日頃から「死」に関して考えている人がどの程度いるだろうか?


「明日が来るのはあたりまえ」
私自身、そんな風に考えているような気がするし、おそらく大多数の人が同じようなものだと思う。

わたしはいま20代後半だ。
「死」というものをまだまだ遠くのものだと感じているし、近づいてくる音さえまだ聞こえない。

だが、最近になって友人のひとりが話してくれたことがきっかけで、その音をすこしだけ身近に感じるようになった。


わたしの友人は高校時代に父親を亡くしている。
急な病気で、彼が部活の合宿に行っているときだったそうだ。
そのころはまだ彼と知り合っていなかったため、その話を聞いたのはつい先日。


この話しをしているとき、ふいに彼がこう言ったんだ


「今だに、いつか帰ってくる気がしてる。葬式もやって墓にも行ったのに、まだそんな風に思うんだ」と。


彼は合宿のため自宅におらず、父親の死に目には会うことができなかったそうだ。

「もう10年以上前のことなのに、昨日のことのように覚えてるもんだよ」
そう言って彼は笑っていた。いつものように。
だけど、そのいつもの笑顔がとても悲しく見えた。


自分とは関係のない他人の死には関心がないかもしれない。
自分自身の最後もまだ感じられないかもしれない。

けれど、自分や自分の関係者じゃない人たちの「死」と毎日向き合いながら「生」を紡ぐために仕事をしている医療関係者の方々がいる。そんな誰かがいるからこそ、横から聞こえる声を愛おしく思うことができる。生きていてくれることに幸せを感じることができる。

きっと友人の彼は、わたしなんかよりずっと大人なんだろう。
「生と死」を近くで見た。それを感じた。
その怖さ辛さは想像できない。

「コード・ブルー」とてもいいドラマじゃないか。
自分の家族、友達、恋人。そういう人たちがドラマのような状態になったとき、それでも「死」を身近に感じない人はどれだけいるのだろう。



いずれわたしにもそんな悲しい時間がおとずれるのだろうな。






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